【デジタルバンキング2024】(上)全米から653人が参加 生成AI基盤の開発が本格化
2024.07.14 04:35
米国の金融専門紙「アメリカン・バンカー」を発行するアリゼントは6月23~25日、フロリダ州ボカラトンのホテル「ザ・ボカラトン」で、「デジタルバンキング2024」を開催した。マッキンゼーアンドカンパニー、マイテック、ニンバスなど65社が協賛し、全米から653人の金融機関関係者らが参加した。生成人工知能(AI)への取り組み、デジタル化による新事業の紹介、サイバーセキュリティーの現状と課題など、2日間にわたって多くの講演、パネルディスカッションが行われ、会場は熱気に包まれた。米国デジタルバンキングの最新事情を取材した。
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生成AIをテーマとした講演では、自社で生成AI基盤の開発に注力する銀行の存在が目立った。アライフィナンシャル(資産約1930億ドル)は、自社でAIプラットフォーム「アライai」を構築。コールセンターでの自動要約、マーケティングのコンテンツ作成、内部監査のリスクマトリックス作成――などに活用している。
サティシュ・ムトゥクリシュナンCIDDO(最高情報・データ・デジタル責任者)は生成AI導入のポイントとして、(1)自社内での利用に限定(2)必ず人間が最終判断(3)個人情報保護の徹底――などを挙げた。また、「新技術導入の不安感を取り除くのはリーダーの仕事」とも強調した。
PNCバンク(資産約5661億ドル)のAI・知性自動化センター部門長のアヌジュ・シャー氏は、「短期的な成果だけでなく、今後何年も続く生成AIの基盤を構築する」と語った。同行は文書処理、データ分析、顧客サポートなどリスクが低く価値が高い分野で生成AIを利活用しているが、顧客との直接的なやりとりでは生成AIに任せない。精度を十分に高めることを優先している。
また、生成AI利活用の各ケースを評価するために、(1)価値(2)リスク(3)技術的な課題――などを考慮したスコアシステムを開発している。
このほか、シチズンズバンクやローカリティバンクなどの生成AI活用事例も紹介され、関心を集めた。
生成AI導入を成功させるためのポイントとして、技術論だけではなく、組織的な取り組みも議論された。マッキンゼー・アンド・カンパニーのビック・ソホーニ シニア・パートナーは、「デジタルバンキングのプロジェクト成功率は30%。これを向上させるには、組織全体を巻き込んだAI活用が必要」と主張した。
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