【デジタルバンキング2024】(中)JPモルガンに関心集まる 500店増設の店舗戦略表明で
2024.07.21 04:40JPモルガン・チェースは、2月に今後3年間で500以上の新店舗の開設、1700の既存店舗の改装、そのための3500人の新規採用――などを発表した。「デジタル化イコール店舗削減」というイメージが強いなか、同行の店舗戦略には「デジタルバンキング2024」に出席した多くの金融機関関係者の関心が集まった。(上編はこちら)
支店の役割は〝軸〟
JPモルガン・チェースは、支店の役割を船の錨に例える。ステファン・シューベルト執行役員消費者・地域銀行向けアイデンティティ戦略責任者は、「単にウェブサイトで特定の商品を顧客に勧めるだけでなく、顧客に支店に来てほしい」と強調する。支店の行員が顧客と対話するなかから、顧客に最適のサービスを見つけることを重視する。そのため顧客が来店しやすく、コミュニティーで存在感を発揮できる支店作りを目指し、既存店舗の大規模改修にも注力する。
「詐欺防御」が課題
課題もある。アメリカンバンカー紙によると、米国の銀行界では支店が詐欺の標的になりやすくなっている。その理由は、支店で詐欺を働く場合はデバイス、位置情報、行動パターンなどの情報がデジタルで記録されにくいためといわれる。さらに詐欺集団はどの銀行の支店がID認証の不正防止機能が弱いかなどの大量の情報を共有している。これは〝詐欺の輪〟と呼ばれ、深刻化している。
JPモルガン・チェースは、デジタルID認証の専門家を配属したり、支店で金融サービスを申し込んだ顧客についてさまざまなデータを横断的に分析して、それが正当かを判断するツールを試験的に導入している。「支店の行員が顧客へのアドバイスに専念できるようにしたい」(シューベルト執行役員)。同行は約5000の支店があり、現在は支店ごとにデジタル対応の在り方にばらつきがあるが、本人認証や小切手の入金などでは、できるだけ早くの標準化を目指している。