十八親和銀誕生1年 、田上長崎市長に聞く 地域と一緒に発展を期待
2021.10.11 04:30十八親和銀行が誕生して10月で1年が経過した。長崎県内の貸出金シェアの問題から当初、経営統合に難色を示した公正取引委員会に対し、承認要請を行って合併を後押しした長崎市の田上富久市長に、同行のこの1年と今後の期待を聞いた。
――なぜ公取委に承認を要請したのか。
「普通に考えれば民間の話で、自治体が口を出す話ではありません。ただ、『金融』と『交通』は地域に必須のインフラで、大きな問題です。非常に長くこう着状態が続き、前に進めることが地域にとって大事だと感じました。県内の13市8町の21首長も賛成で、長崎の市町会として動きました」
――公取委の反応は。
「堅かったですね。譲れない一線と話されていた。その時はバス会社を例に話をしました。バス会社は地域に2社、3社という状況になく、1社が成り立つかどうかの状況。ゼロは最悪の結果です。人口減少と競争で消耗した銀行ではなく、健全で持続可能な地域のことを考えてくれる銀行を支持したということです。競争が第一に来るべきでないと話をしました」
――「強すぎる銀行」への懸念は。
「経済界や市民の一部にそれはありました。しかし、合併が動きだした約1年前、首長が集まる場に銀行が来られて合併の方針、コミットメント(約束)の策定とモニタリングの仕組みなど、地域の心配を取り除く姿勢も感じました。他方で、今はふくおかフィナンシャルグループ(FG)もいろいろチャレンジされていますが、それが安定期になった時にヒエラルキー型組織となり、その方向にならないよう気を付けないといけません。それは行政も同じです」
――十八親和銀に期待することは。
「一つは県全域の活性化、地方創生に力を貸して欲しい、二つ目は市が進める100年に1度の街づくりへの参画、もう一つは新しい銀行像を作り上げていただきたいの3点です。今は時代が動いており、銀行も今後同じ形ではいられないでしょう。『地域と一緒に発展していく』新しい銀行像を作り上げてほしい」
<背景> 合併前、十八銀行とふくおかFGの親和銀行を合算した長崎県内の貸出金シェア70%超を公取委が問題視。経営統合・合併をめぐる審査は2年余り続いた。田上市長は2018年3月、長崎の21市町会を代表して公取委に承認を促す要請書を提出。合併承認へと動かす一つの契機となった。その後、地域銀行を独占禁止法の適用から除外する特例法制定のきっかけになった。
(たうえ・とみひさ、長崎県出身、64歳。九州大法卒、長崎市役所職員を経て07年長崎市長)
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