マーケット・トレンド 日本の超長期債利回りが上昇
2023.10.11 04:25
米国10年債利回りが一時5.0%に迫るようななか、我が国の10年債利回りも0.8%台に乗ってしまった。
10月6日に公表された8月の現金給与総額は、前年比1.1%増に止まり、実質賃金も17カ月連続のマイナスとなっている。
日銀の植田総裁が目指す「賃金も物価もあがる好循環」を確認出来る状況ではないと言え、24年の春闘を見極める前の政策修正を想像し難いのだが、他方、米国債利回りが大幅に上昇するなかで、円金利のリスクを落とさざるを得ないとのプレッシャーが日本の投資家にかかってきていると考えられる。
最近では超長期国債の利回りも上昇してきており、我が国の中立金利と目される1.6~1.7%(インフレ目標2%、潜在成長率マイナス0.4%)を上回る利回りの債券も目立ち始めた。
日銀の金融政策や中立金利といった観点からは債券の利回りも上昇し過ぎではないかと目されるが、結局、米国等、海外の長期債利回りの上昇が止まらないことには我が国の債券利回りの上昇も容易には止まらないと言える。
「高金利でも好景気」が米国債利回りを押し上げるなか、引き続き、米国経済情勢に注目が集まる。
SMBC日興証券金融経済調査部 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎氏