【推薦図書】『人と企業はどこで間違えるのか?』(ジョン・ブルックス著・須川綾子訳)
2023.09.15 04:45【推薦者】信託協会専務理事・川嶋真氏
ビル・ゲイツ氏賞賛の古くて新しいビジネス書
「訳者あとがき」によれば、本書はビル・ゲイツ氏が「最高のビジネス書」として紹介し、W・バフェット氏から20年以上も借りて何度も読んでいた、という逸話のある本である。
本書では、1960年代以前に起きた10の事件や問題が、関係者の証言をもとに臨場感をもって再現される。モノクロのノンフィクション・ドラマを見ているようで、物語に引き込まれていく。
フォード社が満を持して投入したが大失敗に終わったエドゼル、NY証券取引所を揺るがした証券会社の信用不安への対応、法令遵守を周知しながらコミュニケーション上の問題から反トラスト法違反で多くの逮捕者を出したGE、コピー機で著作権の問題を顕在化させたゼロックス、宇宙服開発設計者がヘッドハンティングされた際に起こった営業秘密の議論、等々だが似た事件は今日でも十分に起こりうる。
題名から誤解しそうだが、本書は、関係者の間違いを指摘しあるべき対応を解説するハウツー本ではない。リアルな状況を読者に突きつけ、各当事者の行動や判断は正しかったか、自分ならどうしたか、似た状況に遭遇すればどうするか、読者自身に考えさせるケーススタディの書である。
(ダイヤモンド社、税込み1980円)
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