KSP、事業バリューアップに力 地域金融との連携拡大へ
2023.08.31 04:50
企業再生・成長支援ファンドを運営するキーストーン・パートナース(KSP)は、実質無利子・無担保(ゼロゼロ)融資の返済が本格化し、信用保証協会の代位弁済が増えるなか、地域金融機関との連携拡大に努める。地域金融機関は返済猶予や債権放棄といった”対症療法”はできても、増資を通じた事業のバリューアップの知見が乏しいためだ。KSPはこうした領域で地域金融機関を支えつつ地域活性化へ重要な役割を果たす考え。
KSPは2010年から「日本リバイバルスポンサーファンド」を運営し、22年7月までに五つのファンドを組成。23年3月末までの投融資実行額は累計約1300億円に達する。こうした資金供給に加え、幅広い人脈やネットワークを活用して経営人材や専門家の投入、自らのハンズオン経営までカバーし、投融資先のバリューアップを一気通貫で対応できるのが最大の強み。
ファンドには「垂直」「水平」「多角化」の三つの事業再編手法と、「バランスシートの整理」「損益の改善」「マネジメント体制の強化」の三つのバリューアップ手法を活用し事業再生を進めるノウハウがある。なかでも経営課題の解決が進まないオーナーシップをテコ入れするマネジメント体制の強化で重要な役割を果たす機会が多い。
既に全国金融機関の約240先とビジネスパートナーの関係にあるが、名古屋銀行とはファンドへの出資のほか同行行員の出向受け入れや行内での再生案件窓口の設置など、より踏み込んだ協調関係で取引拡大や収益化につなげる。今後もファンドのノウハウ提供などを通じて提携金融機関を広げる方針だ。
KSPは経営の透明性向上や幅広い株主を募る狙いから株式上場を予定。また、将来的にはファンドの運用額や人材を増やし企業価値を一層高めるために業界再編の核として経営統合も視野に入れる。
堤智章社長は「上場によって第三者の目を入れ、社会貢献と収益を両立させるような徳のある経営に努めたい。地域金融機関と連携して資金を投じる場合でもその地域や企業、従業員にどのような影響が及ぶかも投資判断として重要なポイントとなる」と強調する。
再生ファンドの関連記事
・地域金融機関、専用ファンドで旅館再生 経営手法伝授 自走後押し
・あおぞら銀、地域金融の再生後押し ファンド活用 5年累計150件へ
・山口FG・愛媛銀・山口県内信金、中小企業再生ファンド立ち上げ 中小機構が出資
・金融庁、再生人材育成を後押し REVICが知見還元
おすすめ
アクセスランキング(過去1週間)
- 北陸銀と北海道銀、営業支援システム導入 年18万時間の作業削減
- 金融界、「隠れリース」特定に本腰 27年の新基準適用迫り
- 群馬銀、ストラクチャードファイナンス3年5.7倍 RORA向上に寄与
- 金融庁、決算書入手方法を調査 地域金融の実態把握へ
- 京都中央信金、理事長に植村専務が昇格 白波瀬氏は代表権ある会長へ
- 福井銀、野村証券と包括提携2年 預かり残高5000億円超
- 固定型住宅ローン、金利〝決め方〟見直し機運 参照指標「再検討」も
- メガバンク、上場廃止増えLBOローン好調 三菱UFJ銀は管理高度化
- 信金、店舗減少が小幅にとどまる 職員数推移との格差鮮明
- 地域銀・信金、NISA口座伸び悩む 3カ月の増加率1%