金融庁、運用会社トップ人事に警鐘 処遇重視の恐れ指摘
2023.04.22 04:50
金融庁は4月21日、資産運用会社に対するモニタリングや調査の結果を取りまとめ、トップ人事のあり方などについて警鐘を鳴らした。トップ在任期間が3年未満と短く、グループ内の他社から異動して着任するケースが日系大手のうち7割を占める実態を明らかにした。「人事上の処遇を重視しているとの懸念を持たれる恐れ」があると強調した。
同日、「資産運用業高度化プログレスレポート」を公表した。世界の大手30社では、トップ在任期間が5年以上にのぼる運用会社が59%、10年以上勤めた後に内部昇格でトップに就くケースが47%を占める。
世界と比べて在任の短さなどが目立つ日本の特徴を踏まえ、積み重ねてきた経験よりもグループ内の人事を優先してトップを選任し、ステークホルダーから運用会社としての成長を軽視していると判断される可能性を指摘。トップ就任前に運用会社で勤務した年数が3年未満にとどまるケースが36%にのぼる点も、信頼向上への課題にあげている。
レポートでは、運用体制の透明性確保や、商品組成・管理の改善に向けても多くの問題を示した。例えば、投資信託の運用担当者の名前を開示している比率は2%にとどまり、米国のほぼ100%と対照的。また、日本ではファンドが保有する銘柄の開示頻度は年1~2回にとどまる。一部の運用会社では、成績が思わしくないファンドを見直すための抽出基準が未設定だった。
このほか、毎月分配型投信の保有者・保有経験者の間では、分配金の支払いが元本の払い戻しや基準価額の低下につながっている事実がある。これを認知していない比率が30~40%程度と高くなっている状況を示し、顧客への情報提供や周知が不十分な可能性を示唆した。運用会社と販売会社で分け合う手数料水準の考え方についても、合理的な説明を求めている。
同庁は年1回、同レポートをまとめて国内運用業界の動向を整理し、具体的な課題のあぶり出しを続けている。今回の結果を踏まえ、経営高度化を促すための対話を引き続き深めていく。
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