【推薦図書】『泉に聴く』(東山魁夷著)
2023.04.07 04:45
【推薦者】東和銀行取締役常務執行役員・鈴木信一郎氏
風景画巨匠の思索に浸る
これといった趣味を持てないまま事業法人担当の営業部長を務めていた40代半ば頃、さる自動車部品メーカーの財務部長から美術館巡りの楽しさを酒席で説かれて以降、気になる展覧会にときどき足を運ぶようになった。とりわけ、温かみのある素晴らしい風景画を数多く残した巨匠・東山魁夷にはたちまち心酔するところとなったが、本書は同人が画業の傍ら書き綴ったエッセイ集である。昭和42年に発表された「東と西」と題する作品からは、著者が横浜・神戸で幼少期を過ごしたことで当時としては貴重な西洋文化に触れた後、東京美術学校で日本画科を選択し、卒業後のドイツ留学でさらに広い視座を獲得していかれた経緯や思索の過程などを辿ることができる。「西洋にも中国にもない日本の風景画の特徴の一つとして花鳥的な風景というか自然の一隅を題材とする場合が多く、日本人の自然への愛情のしるしでもあろう」と述べている。
今年2月下旬まで東京広尾の山種美術館で開かれた企画展「日本の風景を描く」における著者の出展「白い峯」では、山形蔵王の純白な樹氷の後背に澄み切った青空が描かれ、その深い群青色に引き込まれた私は、帰宅後10年振りに本書を再読した次第である。
(講談社文芸文庫、税込み1540円)
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