静岡県内金融機関 承継加速へニーズ共有 匿名データベース活用
2023.04.04 04:50静岡県内の4地域銀行や8信用金庫、信用農業協同組合連合会は4月3日、第三者承継を支援する「しずおか未来承継プロジェクト」を始めた。「M&Aナビ」(東京都渋谷区)の基盤を活用し、事業の売却ニーズを共有する。事業承継・引継ぎ支援センターも参画し、後継者不在企業の支援を急ぐ。
同一都道府県内で10以上の金融機関が同じスキームに参画するのは全国で初めて。プラットフォーム上で企業名を明示しない「ノンネームデータベース(NNDB)」を構築し、匿名化された売却ニーズをリアルタイムで管理する。今後、残る1信金の参画を目指す。
顧客の同意に基づき、ワンクリックで他機関との情報共有が可能だ。成約すれば手数料の一部が売却ニーズを掘り起こした機関に還元される。
事務局は同社が務め、参画機関の調整を行う。同行訪問やセミナー開催を通じ、買い手探しや契約書作成などを担う人材の育成も支援する。企業と関係が強い地域金融機関が主体となってM&A(合併・買収)を支援できるよう内製化を進め、小規模案件でも収益化しやすい環境を整える。
帝国データバンクによると、静岡県での後継者不在率は53%と全国平均(57%)を下回る。一方、「業績改善が見込めない」などの理由で事業承継を中断する企業が増えており、ニーズ共有を通じて案件の滞留を防ぎながら収益化につなげたい考え。
他都道府県でも横断的な枠組みへの関心は高い。戦略領域となるためニーズの共有に抵抗感を持つ金融機関は多いためだ。同社には他機関といかに調整したか照会が寄せられているという。同社の瀧田雄介社長は「スタートアップや新規法人を立ち上げるとき、既存事業を買収するM&Aは有効だ。実績を積み上げ、すべての金融機関で案件情報を共有できるようにしたい」と今後の事業展開を見据える。