アフターコロナへの展望⑥~事業性評価で未来を探ろう
2023.04.09 04:55
いよいよ今回から、事業性評価についてお話しを進めてまいります。まず始めに皆さんに質問です。私たちは、事業性評価を通じて何を知りたいのでしょうか? そして、過去の決算書だけで、事業性評価が出来ると思われますか?
過去の決算書とは、会計原則に基づく、過去のモノやおカネを主に示しています。一方で、私たちが知りたいお客さまの事業性とはなんでしょうか? 私たちが知りたいのは、お客さまの未来の姿だと思います。
今の時代が、経営環境激変の時代であることは、誰も異論はないでしょう。それでは、環境激変の時代に、過去の延長線上にそのまま未来は訪れるでしょうか? 樹木に例えれば、私たちが知りたいのは、過去どれだけその木に果実がなったかではなく、これから未来にどれだけその木に果実が成るかです。そしてそのためには、土壌と根っこの状態を知ることが必要です。土壌は肥沃なのか? 根っこは広く深く張っているのか? もし土壌が既に枯れ、根腐れしていては、未来の果実は望めるはずはありません。
まず押さえておかなければならないのは、土壌即ち経営環境の変化です。人口やマーケットの変化、競合他社の動き、金利や為替の動向などを踏まえて、未来の決算書を考える必要があります。その際、前提は自社にやや厳しめに設定します。未来を直視することで、最悪のシナリオまで想定しておけば、あとはそれより好転するばかりです。
人口の減少や高齢化は大前提になります。それに伴い、お客さまの動きや消費の傾向も変わってくるでしょう。コロナは、私達の生活を大きく変えてしまいましたが、アフターコロナになっても昔と同じような元には戻りません。時代は先に進んでいくのです。
それに合わせて、自社の商品やサービスの内容も変えて行く必要があるでしょう。これをマイナスに捉えるか、プラスに捉えるかで大きくビジョンは変わってきます。新たなマーケットが生まれているのであれば、それはブルーオーシャンでありビジネスチャンスになるのです。
そして他社動向です。競合他社が変化を求めず今までの商品やサービスから変わらないのであれば、更に自社のチャンスは広がります。新しいマーケットを独占することも可能かもしれません。
また、金利や為替などの相場変動にも注意が必要です。長期金利は、若干の上昇は折り込んでおく必要があります。物価も上昇が見込まれます。従業員の給料も上げる必要があるでしょう。そうなると、自社の商品やサービスの適正価格も変わって来ます。値上げをしても売れる商品を考えることも大切です。
環境激変の時代は、大きな者や強い者が生き残るのではなく、環境の変化に適応出来た者だけが生き残れる時代です。私は経営者の方々とお話しをする際には、まず3年後5年後の未来のお話しを伺います。未来を語れない年配の経営者がいらっしゃることは、残念なことです。思うは思われる。未来を思う人に未来は微笑みます。金融機関が経営者の皆さんと未来を語り合う、対話の相手になれたら素晴らしいですね。
次回(4月9日予定)は事業性評価をするうえで、決算書の限界についてお話しをいたします。
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