三菱UFJ銀、分散型IDで融資機会拡大へ DNPと実証実験開始
2023.03.29 20:04
三菱UFJ銀行は、自身で個人のアイデンティティを管理する「分散型ID」を活用して融資機会の拡大につなげる方針。個人ではキャリアの見える化、法人では非財務情報の充実などが期待でき、新たな信用力の評価が可能になるからだ。その前段として3月29日、大日本印刷(DNP)と分散型IDに関する基本合意書を締結。4月以降、順次実証実験を進めていく。
近年、人的資本経営への関心が高まり、個人の価値観の多様化や人材の流動化が進展する中、個人のスキルやパーソナリティーの可視化と共通言語化に役立つ分散型IDが注目されている。同行は基本合意書に基づき、自己主権型のデジタル証明書の発行や分散型識別子に関する技術検証のほか、これらを活用するビジネスの事業化検証も行う。
実証実験では、学校業務のデジタル化に取り組む。学校の教務窓口での身分証明書の提示や書面による手続きを経なくてもオンラインで各種証明書の入手を可能とする。在学証明、学習履歴、卒業証明書などのデジタル証明書を発行することで、学生が自身に関する情報をスマートフォンで管理し、デジタルIDとして活用できるようにする。
自律的なキャリア形成などに結びつく支援基盤も構築する。個人の属性、学歴、資格、職歴、スキルなどを、デジタル証明書として発行・検証できるネットワークを築き、就職・転職時の活用をめざす。また、社員のキャリアを見える化することで、高度な人的資本経営の実現につなげる。
将来的には分散型IDを本業にも応用したい考え。例えば、個人では住宅ローンで所得や勤続年数といった一般的な評価基準以外に、借り手のキャリアやスキルなども新たな信用力の物差しにできる。法人でもキャリアの可視化を通じて非財務情報の開示や内容の充実が予想されるため、同行では取引先の実情をより深く知ることになり融資機会の拡大も期待できる。
分散型IDの領域は欧米が先行し、24年には実用化される見通し。日本でも三菱UFJ銀とDNPが信頼性のあるデータ流通の実現を狙いにネット上で扱う個人データを自ら管理できるシステムやネットワークを構築し、早期に本格的な社会実装をめざす。
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