信用不安、米国から欧州へ UBSがクレディ・スイス買収
2023.03.20 13:02
米欧の金融機関を中心に信用不安が世界的に急拡大するなか、金融危機回避へ当局・業界を挙げての〝総力戦〟の様相が強まっている。3月19日(現地時間)にはスイス金融最大手のUBSが、財務・収益面の脆弱性を抱え、株価が急落していたクレディ・スイス・グループの買収を発表。また、FRB(米連邦準備制度理事会)や日本銀行など主要6中央銀行は協調で、基軸通貨の「米ドル」供給策を拡充。流動性懸念の解消へ万全を期す構えを示した。
シリコンバレーバンクなど米銀3行の破綻・清算を受け、マーケットの緊張が高まるなか、G-SIBs(グローバルなシステム上重要な銀行)の一角であるクレディの信用不安増幅は、グローバル危機への新たな火種となりうる。世界の金融当局は大手行などを巻き込み、一刻も早い姿勢表明で火消しに回った。
スイス国立銀行(中央銀行)とスイス金融市場調査局は同15日、クレディについて「自己資本と流動性に関する厳しい要件を満たしている」と財務の健全性を訴えつつ、「必要があれば流動性資金を供給する」との共同声明を公表。一方のクレディ側も同16日、スイス国立銀行の資金供給枠から最大500億スイスフラン(約7.1兆円)を調達して流動性を強化することを未明に発表。同19日には、UBSがクレディを30億スイスフランで買収することを明らかに。スイス中銀による流動性支援と、スイス政府による政府保証を伴う形での巨大金融機関の再編に至った。
今後、懸念されるリスクの一つが、「大き過ぎて潰せない」規模の巨大金融グループが発行する債券の信用力低下だ。
スイス連邦金融市場監督局(FINMA)は同19日、政府の特別支援により、約160億スイスフラン(2兆2000億円)相当の偶発転換社債(CoCo債)などAT1(その他Tier1)債が中核資本への組み入れにより、無価値となったと公表。CoCo債は、公的支援や自己資本比率が一定水準を下回った場合など特定の条件(トリガー条項)が起きた際に強制的に株式に変わったり、元本が削減されたりする転換社債で、リーマン・ショック後の新たな資本増強策として認められた。
弁済順位が低い半面、高利回りで、発行コストも「株式」に比べ抑えられるため、超低金利環境下、投資家・発行体双方のニーズを満たしていた。今回のトリガー条項の発動で、他行のものを含めグローバルな影響が免れない状況に陥る恐れがある。
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