【推薦図書】『会津士魂』(早乙女貢著)
2023.03.17 04:45
【推薦者】きらぼし銀行会長・北川嘉一氏
もう一度、訪ねたい場所
20歳台の半ばから30歳前半までの数年間、縁あって毎年夏に猪苗代を訪れていましたが、豊かな自然に明るい日差しが差し込み、大らかに時が流れているイメージが今でもくっきりと残っています。
また、私自身は幕末から明治維新に至るまでの激動の時代に興味を持っており、中でも「会津藩」には何か心惹かれるものを持っていました。
ご存知の方も多いと思いますが、会津藩には「会津家訓15カ条」という家訓があります。そして、その第1条では徳川本家への絶対的忠誠が記されており、同藩の藩士が辿った悲劇もここに起因しているとも言われています。
ですので、私の中で2つの対称的なイメージを残している「会津」という場所は私にとっては特別な場所でもあり、これまでに多くの史蹟を訪ね、多くの書物を読みましたが、その集大成が「会津士魂」です。
家訓の束縛、新しい時流への対応、藩の存続を考えて様々な葛藤を繰り返しながらぎりぎりの判断をしていく過程はとてもドラマチックであり、このドラマを経て日本が近代化の道を歩き始めることになります。
明治維新という大きなうねりの中で、当時の会津藩の果たした役割は何だったのか、何を教訓に残したのか、長編ではありますが非常に興味深く、こんな思いを胸に改めて「会津」を訪れたいと思っています。
(集英社文庫、税込み755円)