日銀、大規模緩和を維持 政策修正の効果「時間要する」
2023.03.10 19:50
日本銀行は3月9、10日に開いた金融政策決定会合で大規模金融緩和の維持を決めた。2022年12月の政策修正で拡大した長期金利の許容変動幅(±0・5%程度)も据え置き、イールドカーブ(利回り曲線)の歪みなど市場機能低下に対する副作用対策の効果を引き続き見極めていく方針。
一方、これまで国内経済の下押し要因としてみてきた「新型コロナウイルス感染症」への目配りを緩め、足元で4%程度となっているインフレ動向により視線を向けていくスタンスを示した。
黒田東彦総裁は、自身最後の出席となった同会合後の会見で、10年間の異次元緩和について「物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっている」と経済環境の変化に触れ、女性・高齢者の雇用拡大など政策効果を強調した。ただ、2%物価安定の目標には「持続・安定的に達成される状況には至っていない」と金融緩和の継続を訴えた。
また、市場機能低下や金融機関収益の悪化といった副作用を念頭に「経済・物価情勢に応じて対処しつつ、効果的かつ持続的な金融緩和を講じてきた」と行動を振り返った。現状のイールドカーブについては、政策修正後も「歪みが残っているのは事実」と認めながら、「市場の金利形成が定着していくには、ある程度、時間を要する」と日々のオペレーション(公開市場操作)などを通じた市場機能回復を見込んだ。
3月10日までに衆参両院の同意・承認を得た、次期総裁候補の植田和男・共立女子大学教授(71)には「素晴らしいエコノミストであると同時に、金融政策の実務にも精通している」と手腕に期待した。