【推薦図書】『ほろ酔いばなし 酒の「徒然草」』(横田弘幸著)
2023.03.10 04:45
【推薦者】アイティフォー社長 佐藤 恒徳氏
人生を豊かにする酒の楽しみ方を学ぶ
元新聞記者で酒文化に造詣の深い著者が、『徒然草』から酒に関する話を取り上げ解説する。泣き上戸や笑い上戸の姿、酩酊しての喧嘩や失敗談、下戸の酒席での社交術など、吉田兼好が記す酒呑みのエピソードを通して、酒とのつき合い方や人生の楽しみを教えてくれる。
私も酒が好きで、休日にはお気に入りの音楽を聴いてゴルフクラブを磨きながら、ビールを飲むのが無上の喜びである。酔っ払いの姿は700年前から変わらないことに感心すると同時に、自分の過去の失敗談を思い出し身につまされる。その一方で兼好が説く「一期一献」、すなわち生きて酒を酌み交わす今の瞬間を大切に思う「存命の心」のくだりは、私のモットーである「人生は一回きり、今できることは今やろう」に通じるものがあり深い共感を覚えた。
著者の横田氏は本書の中で、兼好が酒に向き合う姿勢をもとに、いたずらに酩酊せず慎み深く酒をたしなむ「酒道」を提唱している。私もこの精神を心に刻み、好きな酒を片手に今後の人生を豊かに過ごしていきたいと思っている。
さて、約2年前、コロナ禍の自粛真っただ中に始まった、当欄の私の担当も今回で最後である。最近ようやく制限も緩和され、飲食店の賑わいも徐々に戻りつつあるようだ。気の置けない仲間と集い、旨い酒を一緒に楽しめる世の中がいつまでも続くことを願って…
乾杯!
(敬文舎、税込み1760円)