【推薦図書】『世界の富裕層を魅了する「日本酒」の常識』(久保順平著)
2023.02.24 04:45
【推薦者】財務省主計局次長・前田 努氏
日本酒がお好きでしょ?
2022年の農林水産物・食品の輸出額は1兆4000億円と過去最高を記録した。苺や梨といった青果物も増加しているが、輸出額の1割を占めるのは実はアルコール飲料であり、日本酒も前年比2割増となっている。本書はその日本酒について「日本酒酒造には、なぜ老舗が多いのか」、「蔵元が考える日本酒の愉しみ方」など蔵元の「常識」を語ったものである。
著者の久保順平氏は300年続く老舗久保本家酒造で、完全発酵純米酒「生酛造り」を導入、日系航空会社の国際線ファーストクラスに採用された「睡龍」など自社ブランド開発を成功させた11代目蔵元である。本書では、著者のロンドンでの銀行員生活の経験から、「世界で作る『SAKE』は投資対象になるか」など経営や国際的な視点も語られており、「熟成酒の生産が激減した原因は、明治政府による酒税の導入」と財政当局には耳の痛い指摘もある。
歌聖柿本人麻呂に「東の野に炎の立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ」と詠まれた奈良県大宇陀の地に久保本家酒造はある。私も風光明媚な彼の地を訪れ、熱燗の濁り酒「生酛のどぶ」を順平さんと酌み交わすことを毎年末の楽しみとしている。読後、日本酒の杯に思わず手が伸びるお薦めの一冊である。
(日経BP・日本経済新聞出版、税込み1760円)
関連キーワード
おすすめ
アクセスランキング(過去1週間)
- 北陸銀と北海道銀、営業支援システム導入 年18万時間の作業削減
- 金融界、「隠れリース」特定に本腰 27年の新基準適用迫り
- 群馬銀、ストラクチャードファイナンス3年5.7倍 RORA向上に寄与
- 金融庁、決算書入手方法を調査 地域金融の実態把握へ
- 京都中央信金、理事長に植村専務が昇格 白波瀬氏は代表権ある会長へ
- 福井銀、野村証券と包括提携2年 預かり残高5000億円超
- 固定型住宅ローン、金利〝決め方〟見直し機運 参照指標「再検討」も
- メガバンク、上場廃止増えLBOローン好調 三菱UFJ銀は管理高度化
- 信金、店舗減少が小幅にとどまる 職員数推移との格差鮮明
- 地域銀・信金、NISA口座伸び悩む 3カ月の増加率1%