メタバースとは一体何?活用例や注目されている背景・メリットなどを解説

2023.05.16 17:40
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メタバース

近年、注目度が高い「メタバース」。主にエンターテインメントでの活用が中心でしたが、ビジネス分野での活用事例も徐々に増えています。本記事では、メタバースの概要、注目されている背景、メリット、活用例などを解説します。


 


メタバースとは一体何?

 


メタバースとは一体何?


メタバースとは、巨大な3次元の仮想空間のことです。現実世界と同じように、景色、建物、人々の活動、社会システムなどがインターネット上に再現されています。ユーザーは自分の分身であるアバターを介して仮想空間内に入り、自由自在に活動できます。例えば、他のアバターと話をしたり、ゲームを楽しんだり、ミーティングをしたりといったことが可能です。


メタバースという言葉は、「メタ=超越」と「ユニバース=世界」を合わせた造語です。この造語は、「スノウ・クラッシュ」というニール・スティーヴンスンが発表したSF小説に登場する仮想空間が、メタバースという名前だったことが由来です。


近年では、メタバースはビジネスや教育、医療などで活用する取り組みが増えています。将来的には、現実世界とメタバースがより深くつながり、経済活動や社会システムも含め、メタバース空間上で生活の一部を行えるレベルまで普及することが予想されています。


・仮想空間との違い

メタバースも仮想空間もどちらも仮想現実の世界を表す言葉ですが、仮想空間はコンピューターグラフィックスで作成された単一の3D空間です。ゲーム、教育、トレーニングなどの目的で使用されます。一方、メタバースは、単にVRゴーグルを使用して仮想の世界に入るだけではなく、現実世界と同じように、リアルなコミュニティを作り、他の人と交流できる点が大きな違いです。


・VRとの違い

メタバースは、VR(Virtual Reality=仮想現実)とも異なります。VRは、VRゴーグルを装着することで、現実のような体験が得られるデバイスや技術であり、体験するにはVR機器が必要です。一方、メタバースは同じく、インターネット上の仮想空間ですが、VR機器使用の有無に関係なく利用できます。VRによる没入型の体験だけでなく、そこで人々が交流し、社会活動を行うための仮想空間を提供します。


・メタバースが活用できる分野と活用例

メタバースは、主にゲーム分野とビジネス分野で活かされています。ここでは、それぞれの活用例をご紹介します。以下は一例であり、今後メタバースはさまざまな分野での活用が期待されています。


  1:ゲーム分野

メタバースは、ゲーム分野での利用が一般的です。活用例としては、アメリカのEpic Gamesが提供するゲーム「フォートナイト」が挙げられます。フォートナイトでは、ゲーム内にある「パーティーロイヤル」でメタバースの一部がすでに構築されています。パーティーロイヤルでは、ユーザーたちがミニゲームで遊んだり、交流したりできます。ここで星野源さんなど人気のミュージシャンがバーチャルライブを開催しました。


任天堂の人気ゲームとして知られている「あつまれどうぶつの森」も、メタバースの一種といえます。このゲームでは、ゲームの世界にたくさんの人が集まり、自由に遊べる点が特徴です。


このようなゲームを通して、現実世界と仮想世界のつながりをリアルに体験している人が増えています。


参照:


フォートナイト - 無料でフレンドと制作、プレイ、そしてバトルしよう!


あつまれ どうぶつの森 | Nintendo Switch | 任天堂


 


  2:ビジネス分野

<バーチャルオフィス>


バーチャルオフィスでは、出社したアバターが同僚とコミュニケーションし、業務が行えます。Facebook(現在のMeta)が2021年に公開した「Horizon Workrooms」は、同じ空間に実際にいるかのように、自然な会話が実現されています。


日本では株式会社OPSIONが「RISA」、株式会社ガイアリンク(日本の代理店)が「Virbera(バーベラ)」を提供しています。


参照:


Horizon Workrooms Virtual Office & Meetings | Meta for Work


メタバースオフィス RISA(リサ)- 仮想空間ならではの体験がここに。


メタバース | ガイアリンク  | Virbela |日本


 


<バーチャルイベント>


「Fortnite」では、バーチャルイベントが毎日のように開催されています。バーチャルイベントは、エコ・安全・低コストのイベントとして期待されています。


参照:


フォートナイト - 無料でフレンドと制作、プレイ、そしてバトルしよう!


 


<バーチャルショップ>


バーチャルショップでは、実際の店舗と同じく、物品やサービスを購入できます。「Burberry」や「Beams Japan」などが話題となりました。


参照:


バーバリー | 公式サイト&ストア


BEAMS JAPAN(ビームス ジャパン)|BEAMS


 


・メタバースが注目されている背景とは?

2021年後半からメディアで話題になっているメタバース。ここでは、なぜ注目されているのか、その背景について解説します。


  背景1:VR技術の進化とVR機器の普及

VRゴーグルの軽量化やワイヤレスなど、近年のVR技術の進化が背景にあります。アバターの身ぶりや手ぶり、顔の表情などもリアルに近くなり、現実に近いコミュニケーションが可能になってきました。このようなVRを使ったコンテンツのクオリティの向上もメタバースが注目されるようになった要因です。


VR市場は、エンターテインメント、教育・訓練などの分野で拡大しており、VR機器も広く普及しています。VR機器の出荷台数は2019年では約4863万台でしたが、2020年には約6202万台になり、大幅な増加が見られます。



世界のAR/VR市場規模・VRヘッドセット出荷台数の推移及び予測(出典:総務省|平成30年版 情報通信白書|端末)
世界のAR/VR市場規模・VRヘッドセット出荷台数の推移及び予測(出典:総務省|平成30年版 情報通信白書|端末)

 背景2:オンラインコミュニケーション

オンラインコミュニケーションが進化してきたことも、メタバースを後押ししていると考えられます。従来よりもネット通信の音質や画質はかなり向上しており、遅延することが少なくなってきました。また、テキストのやり取りはもちろんのこと、ボイスチャットなどネットを介して、コミュニケーションしやすくなり、広く普及するようになりました。このような進化のなかで、メタバースが注目されています。


 背景3:NFTブームの影響

NFT(Non-Fungible Token)は、日本語で「非代替性トークン」と呼ばれるデジタルデータです。偽造や複製ができないことが特徴の鑑定書つきのデジタルデータとして注目され、2021年にNFT市場が急拡大しました。このようなNFTや仮想通貨などが実用化されたことも、メタバースに人々の関心が向けられた要因となっています。メタバースにNFTを組み合わせることで、仮想空間上においても大規模な経済活動が実現するのではないかと期待が寄せられています。


 背景4:新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、イベントの中止や開催時の厳しい制限などを余儀なくされました。テレワークが進んだことで、外出する機会も急減しました。こうした状況でコミュニケーションのデジタル化が進み、オンラインでの仕事や勉強、交流がより重要性を増してきました。このように、感染防止対策としてオンライン上でのやり取りが一気に加速したことも要因となっています。


 背景5:Facebookの社名変更とメタバース事業への本格参入


世界のメタバース市場規(出典:総務省|令和4年版 情報通信白書|仮想空間市場など)模(売上高)の推移及び予測
世界のメタバース市場規模(売上高)の推移及び予測(出典:総務省|令和4年版 情報通信白書|仮想空間市場など)

2021年10月に米国のFacebook社が「Meta Platforms(Meta)」へ社名変更しました。その背景には、DX戦略があると考えられています。Facebookを生み出した同社は、メタバースという新たなテクノロジーでDXを進めようとしています。  そこで、メタバース事業に本格的に参入してきたのです。この出来事をきっかけとして、その他の企業もメタバース事業への参入を表明しました。メタバースの世界市場は、2030年には100兆円近くまで拡大すると予想されています。


・メタバースで得られる効果・メリット

 


メタバースイメージ2


メタバースを使うことで、さまざまな分野で可能性が広がります。ここではメタバースの3つの効果・メリットをみていきましょう。


 


 効果1:没入感のある体験の向上

メタバースでは、実際に対話しているような感覚になり、より没入感に浸れます。従来の2次元のWeb会議や、文字を使用するチャットでも、遠隔地とやり取りはできますが、「一体感が感じられない」「微妙なニュアンスが伝わりにくい」といった課題がありました。


U-SiteのWeb会議に関する調査では、「Web会議で発言するタイミングがつかみにくい」「相手の表情が読みにくい」などの声が上位に上がっています。このことから、従来のオンラインでのやり取りでは、必ずしもスムーズに会話や連絡ができていないことがわかります。


メタバース空間は、アバター同士が接近すると音声が大きくなり、またオフィスに人がいるかが可視化できるため、より現実に近い環境です。先述したバーチャルオフィスでは、アバターたちが同じ空間で会話やミーティングを行えます。例えば、ホワイトボードに書かれた文字も現実の世界と同じように見ることができ、オフィスで自分が実際に仕事をしているかのような感覚になります。感情をリアルに表現できるため、より没入感のある体験が可能です。


参照:Web会議の困りごとと顔出しの状況 – U-Site


 


 効果2:現実では再現できない演出

メタバース空間上には、3DCGで作られたアバターや建造物などを自由に構築できます。仮想空間だからこそ、目的に合った空間の演出が可能です。そのため、現実世界では物理的に不可能だったり、コストが大幅にかかったりする演出もメタバース上では実現が可能です。現実では再現できない演出をすることで、実際に参加するイベントとはまた異なる体験ができるでしょう。


「NISSAN CROSSING」という日産自動車のバーチャルギャラリーは、実際のギャラリーを忠実に再現したものです。電気自動車に乗ることができるだけでなく、メタバース内で地球温暖化の影響を体験できる環境ツアーも行われています。


また、2022年に新型軽電気自動車として「日産サクラ」の発表会を開催。見学や試乗を提供しました。仮想空間内とはいえ、実際にハンドルを操作して走行することや充電の体験ができるため、これまでにはない臨場感のある演出を実現しています。


参照:


日産:NISSAN CROSSING 銀座に最先端テクノロジー搭載のクルマを展示


日産:サクラ [ SAKURA ] 軽自動車 Webカタログ トップ


 


 効果3:物理的な制約がない

メタバースは、オンラインでどこからでも参加でき、世界中の人々とのリアルタイムでのコミュニケーションが可能です。遠方で参加できなかったイベントなども、メタバース上なら楽しめます。


また、ショッピングを例に挙げると、居住地から遠いところにあるお店で買い物ができない問題も、メタバース上で解消されます。現在もECサイトの利用により、店舗に行かなくてもどこからでも商品を購入することは可能です。しかし、メタバースがECサイトと違う点は、アバターを介して、遠方の友人や家族とショッピングを一緒に楽しめる点です。また、敷居が高そうな店舗でも、アバターが動くことで入店しやすいと感じるでしょう。


事業者側のメリットとしては、実店舗を持たずに、ブランドの世界観を表現でき、かつ低コストで運営できることです。エリアを限定せずにマーケティングできるため、幅広い顧客層にアプローチできるでしょう。


また、3DCG効果により、商品を360度あらゆる角度から見せることができ、商品の魅力を伝えやすいことも特徴です。現実世界の映像にCGコンテンツを重ねて表示するAR機能を導入すれば、商品の設置イメージや商品のサイズ感などが確認できるため、返品や交換を減らせます。


・メタバースにデメリットはある?

 


メタバースイメージ3


 依存しやすい

没入感が高いメタバースの空間では、現実世界との関係性が希薄になり、依存してしまう人が増えることが懸念されています。現実の世界と同様にやり取りができ、経済活動も行えるため、仮想空間に入り込んでしまう人も現れるでしょう。メタバースを楽しむためには、のめり込みすぎないように、ある程度の距離感を保つことが必要です。


 ハッキングリスク

メタバースで経済活動を行う場合に必要不可欠なのが、資産を保管する財布のような「ウォレット」の存在です。ウォレットが万が一ハッキングに遭うと、甚大な損害を被ることになります。ハッキングのリスクを低減するには、セキュリティの高いウォレットを選ぶことが大切です。管理体制を徹底することと、ユーザー側にも複雑なパスワードを設定するなどの対策が求められます。


 機材の準備

メタバースの利用には、パソコンやVR機器が必要です。パソコンは一定のスペックを持つものが望まれます。VR機器は現状ではまだ高価なものですので、ある程度の投資は必要です。また、パソコンやVR機器の設定も行わなければなりません。設定が済んでいたとしても、日常的にパソコンを起動して、VR機器を装着するという手間があり、人によって手間が面倒と思う方もいるでしょう。


・メタバースは今後、どのようになっていく?

エンターテインメントだけでなく、ビジネス分野でもメタバースの技術が活用されており、身近なものになりつつあります。今後、バーチャルリアリティの技術がさらに向上すると、メタバース上での買い物や仕事など、現実の生活の一部が仮想空間に置き換わる可能性があるかもしれません。また、メタバース内での取引が活発になることで、仮想通貨の普及がより拡大する可能性があります。


かつてはSFの世界で起きていたようなことが、今では実現に向かっています。とくにゲームやアート、音楽などのエンターテインメントでの活用が多いですが、ビジネスに分野でも着々と実用化が進んでいることも確かです。ビジネスの新しいチャンスとしてメタバース事業を捉えている人々や企業も少なくありません。


以上のように、メタバースは今後もさらに成長することが予想されます。ただし、技術が進歩するに伴い、新たな課題も発生する可能性もあるため、適切な対策が必要となるでしょう。


まとめ

メタバースとは、巨大な仮想空間のことです。現実世界と同じように、さまざまなものがインターネット上に構築されており、ユーザーはアバターを介して仮想空間内に入り、自由に活動できます。メタバースはゲーム分野での活用が目立ちますが、バーチャルオフィス、バーチャルショップなど、ビジネス分野でも導入が始まっています。より没入感のある体験ができること、現実では再現できないような演出ができることなどがメリットです。一方で、依存性などの問題も懸念されていれます。今後、技術の向上に伴い、現実の生活の一部がメタバース空間に置き換わる可能性もあり、メタバースの動向に注目したいところです。


 


【執筆者】ニッキンONLINE編集部


 

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