「隣の芝生は青くない」 静岡銀のアルムナイ人材 簑グループ長
2023.02.10 04:50静岡銀行では、アルムナイ(卒業生)人材が外部で培った知見や経験を生かし、改めて同行で活躍するケースが出ている。働き方の多様化や就業観の変容などを背景に、再雇用がネガティブなイメージから「ポジティブと捉えられるようになった」(経営管理部人事開発グループ)。今後、アルムナイ人材とのネットワークを構築する考えだ。2020年4月にカムバックした簑慎一郎市場営業部ストラクチャードファイナンスグループ長(47)にスポットを当てた。
簑グループ長は同行退職後、スタートアップの立ち上げと大手信託銀行の道を歩んだ。「もともと嫌で辞めてはいないが、起業に挑戦したかった」と当時の心境を明かす。ただ、起業は思うように軌道に乗らず諦め、前職の信託銀には約5年間在籍し、国内外の再生可能エネルギーなどのプロジェクトファイナンス案件に携わった。世界を見るなかで地元への熱い思いもこみ上げた。「実は辞めて後悔していたし、銀行は大きなポテンシャルを秘めている。例えば、SDGs(持続可能な開発目標)は世界と比べ日本、そして地元静岡は遅れていると感じた。自分の経験してきたことを地域、お客さまのために生かしたい」と〝古巣〟への復帰を決断した。
最初の配属先はソリューション営業部(現・コーポレートサポート部)法人ファイナンスグループ。周囲の反応については「特に抵抗もなく受け入れてもらった。中途採用の行員も増えていて驚いた」と振り返る。
印象的な出来事は、投融資を通じて社会に好影響を与える「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)」を企画・開発し、邦銀初の中小企業向けPIFを実行したこと。国内でもPIFの認知度がまだ低いなか、海外の環境意識の高まりを国内や地域に波及させようと一から商品設計や評価基準の検討などに取り組んだ。環境省や静岡経済研究所、日本格付研究所(JCR)など外部機関との連携に奔走した。21年1月には、外国人従業員に対する雇用環境の整備を目指す取引先に、1億円を融資。その後の起爆剤につながった。
簑グループ長は「地方銀行は昔ながらの古い文化もあるが、どこの企業でもある。いろいろな企業で働いてきたが、『隣の芝生はそんなに青くない』。外に出て良さがみえたら、他流試合をしたと思って戻ればいい」と教訓を語る。同行に副業・兼業や外部出向などを推奨し自律的なキャリア形成を支援する「マイキャリア・デザイン制度」があることにも触れ、「辞めないでもいろいろな経験ができる」と助言する。
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