【推薦図書】『世界の空き家対策 公民連携による不動産活用とエリア再生』(米山秀隆 編著)
2023.01.27 04:45
【推薦者】元日本金融ジェロントロジー協会理事・山田博之氏
空き家・空き地問題は世界共通の課題
空き家問題は人口減少社会を迎えた日本にとって、地域そして国全体の大きな社会課題でもある。
本書では、単に空き家の解体・活用を進めるだけではなく、空き家・空き地を含むエリア全体をどのように再生し、「まちとしての魅力」を回復させていくのか、総合的に考える必要性が高まっているとしており、国内の施策にとどまらず、海外の空き家対策について、現地調査を通じた実例も交えながら、日本への適用可能性について提言している。
総務省「住宅・土地統計調査」によると、日本の空き家は別荘等を除き811万戸、率にして13.0%。本書によれば、海外の空き家率は、米国12.7%、独4.4%、仏8.3%、英2.5%と、人口動態の違いはあっても、空き家・空き地が多いエリアはどの国でも存在し対策が講じられていることが紹介されている。中でも目を引くのは、エリア再生と連動した、公民(官民)連携による資産価値維持向上を企図した取組みだ。日本では人口減少下、広がりすぎたまちをコンパクト化する課題もあり、エリア再生のハードルは高いが、まちづくりのあり方を変えるチャンスであると論じている。
全国の所有者不明の土地は九州の面積を上回るという。本書の指摘通り、著しく人口減少が見込まれる日本だからこそ、新たな仕組みを構築できる可能性を秘めているのかもしれない。
(学芸出版社、税込み2200円)