識者インタビュー② 田中・ありあけキャピタル代表「人事評価でカルチャー変革を」
2023.01.08 04:45
銀行はエクイティ投資とどのように向き合うべきか。識者インタビューの2人目は、地方銀行の経営改革を支援する、ありあけキャピタルの田中克典代表。
――地銀がエクイティ投資に取り組む意義をどう考えますか。
「レンディングもエクイティも両方出せるということは、モラルハザードを生む可能性があるということだ。だから銀行がエクイティ機能を持つべきではないという意見は、ガバナンス論としては正しい。一方で、地方経済の課題を鑑みた時に、地銀にエクイティ機能を持たせることが必要だということで規制緩和があった。この意義は大きい。なぜなら、保守的な商品設計にならざるを得ないレンディングだけで地域企業の成長を支援するのは無理があるからだ」
――具体的に地銀が取り組むべきエクイティ投資とはどのようなものですか。
「手触り感のあるエクイティに地銀の強みがある。それは地元であり、サイズが小さい案件だ。事業承継にしろ事業再生にしろ、投資する際に最も大変なのはデューデリジェンスになる。エクイティとデットの違いはあるにせよ、地銀の場合は基本的に取引先のデューデリは終わっている。むしろそうでなければ、銀行として今まで何をしてきたのだという話になる。東京のプライベートエクイティファンドが採算割れするような小型案件で優位性を発揮できるだろう」
――課題はどんな点にありますか。
「日本の銀行は利ざやが極小化しており、デフォルトをゼロにするカルチャーになっている。これは、一定のバッファーを設けてその中でクレジットリスクをコントロールする消費者金融とも異なる。その発想では、エクイティ投資はできない。エクイティは駄目になる案件もあるが、総じてみればリターンは高い。つまり、リスクを最小化することが是であるというカルチャーを変える必要がある。全ての案件が成功しないからエクイティなのであり、取るべきリスクもリターンもデットとは異なる」
――カルチャーはどのように変えるべきでしょうか。
「人事評価だ。どういう人を昇進させるのか、どういう人に高い給料を払うのかを行員は見ている。リスクテイクをしっかりと認めるカルチャーを作ることが重要だ。損失を1件出したら終わりというデットモデルの評価ではいけない。そんなことは分かっているという反論もあるだろうが、カルチャーの問題なので実際に変えるのは難しい」
「ただ、エクイティ投資を銀行本体でやる必要はない。同じ人間がレンディングをやりながらエクイティもやるのは難しい。銀行は銀行としてのレンディングディシプリン(規律)を持ち、投資子会社はエクイティのカルチャーを形成していく方がガバナンスにも資する。銀行の融資担当者は、投資子会社が出資している先であろうが、今までと同じように厳しくレンディングの審査を続ければ良い」
次回は1月9日に<識者インタビュー③ 米倉・法政大教授「銀行とVCは一番遠い存在」>を掲載します。
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