御室健一郎・全国信用金庫協会会長 「中小企業を新たな成長軌道に」
2023.01.01 04:55
信用金庫業界が特に重点的に取り組むべき、第一の課題は、「不確実性が増す経済環境の中での取引先支援の強化」だ。取引先中小企業をめぐる経営環境は、コロナ禍による悪影響がようやく減衰しつつあるが、物価高騰に加え、海外経済の悪化懸念と不確実性が増している。
信用金庫は、こうした不確実な経済環境の中にある取引先中小企業に対し、政府による支援策を活用しながら、まずはその資金繰りをしっかりと支え、ウィズコロナの下で、売り上げ回復のための販路拡大・経営改善支援といった取り組みを継続的に実施していく。
さらに、カーボンニュートラル、SDGs、ESG金融といった社会・経済のトレンドや法制度改正といった動きに、取引先中小企業が適切に対応できるよう支援していくとともに、ポストコロナも見据え、取引先中小企業を新たな成長軌道にシフトチェンジしていくため、新分野展開、事業再編といった事業再構築支援を引き続き強化していく。
第二の課題は、「経営管理態勢の充実・強化」だ。地域に必要とされる金融・決済サービスを安定的に提供し、地域からの信頼をゆるぎないものにしていくためには、経営のガバナンスを一層強化し、各種リスクへの対応力を高めていく必要がある。
特に、国際的に重要課題となっているマネロン・テロ資金供与対策については、金融庁の策定したガイドライン等に基づく態勢整備を2024年3月末までに完了させるべく、本年もより一層の取り組み強化を図っていく。
第三の課題は、「デジタル化の推進」。信用金庫においても、地域のお客様にデジタル技術を活用した利便性の高いサービスを提供するとともに、デジタル化による金融業務の効率化を進めていくことが継続的な課題となっている。
デジタル化に関する技術革新のスピードは目覚ましく、新技術導入のための相応の投資や金融実務への落とし込みが絶えず課題となる。個別信用金庫の自助努力に加えて、業界の総合力をもって対応していくことが引き続き重要だ。
第四の課題は、「積極的な広報と人材の確保」。信用金庫の存在意義を地域社会の皆さまに認めていただくためには、信用金庫のブランドイメージを一段と高めていかなければならない。新卒者の採用難や若手職員の早期離職といった問題を抱える信用金庫業界にとっては、優秀な人材の確保にも繋がる。
第五の課題は、「地域の課題解決に貢献できる人材の育成」。信用金庫が引き続き地域社会において求められる役割を果たし、その存在感を増していくためには、地域の抱える課題に果敢に立ち向かい、これを克服し、解決していくことのできる人材の育成が欠かせない。
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