【推薦図書】『41歳の東大生』(小川和人著)
2022.12.23 04:45
【推薦者】みずほフィナンシャルグループ取締役・平間久顕氏
いくつになっても学びつづけたい
郵便配達員として働きながら、6年かけて東京大学に合格。仕事と勉強を両立させ、4年間で見事卒業を果たしたサラリーマンの実話である。毎朝3時に起きて予習と復習、そして日によっては集配業務と大学での授業の両方をこなし、社宅に帰ると妻子が待っている。息子2人と風呂に入って夜9時には就寝。もちろん苦労も多いが、著者は至って明るい。何より、大学で勉強することが楽しくて仕方がないという感じが伝わってくる。いろいろな先生や歳の離れた学友とのエピソードが面白い。この何事にも一生懸命なおじさんに、教授も同級生も、職場の上司や同僚も、何かと助け船を出してくれる。そして何といっても、郵便局という組織の度量の大きさに感服する。
『ライフシフト』の著者であるリンダ・グラットン教授は、「新しい長寿時代の核を成すのはマルチステージの人生と幅広い選択肢だ」という。時代を映すキーワードはリスキリング。企業は社員に学び直しを奨励し、国から補助金も出る。リモートワークが当たり前になり、副業も認めてくれる。その気になればいくつになっても学びつづることができる。
「忙しくないかな」と先生に聞かれた著者は言う。「いえ、挑戦ですから」。
(草思社、税込み1650円)