【Discovery 専門家に聞く】金融機関はSNSをどう活用すべきか

2022.12.16 04:45
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野村総合研究所データサイエンスラボ エキスパート研究員・広瀬安彦氏


炎上リスクの高低など異なる特色
 他の業種に比べ、金融界でのSNS活用事例は少ない印象を受ける。SNSはフレンドリーな言葉での情報発信が求められるため、金融機関には使いにくい部分があるのかもしれない。ただ、啓蒙活動の一環として活用することは有効だろう。例えば、若年層に向けて難解な金融用語を面白おかしく解説することで、ブランドの認知度や好感度を高めることは一つの手法だ。
 その際に留意すべきことは、総花的な情報発信よりも、啓蒙などの特定分野に絞ること。その方が、かえって好感を得られやすい。どの層に訴求していくかを明確にして、勇気をもって割愛することが大事だ。
 4大SNSは、それぞれ特徴が異なる。まず、炎上のリスクが低いのは実名制のFacebook。ビジネスパーソンの利用が多く、高収入・高学歴・大企業勤務といった顧客層に訴求しやすい。YouTubeはコメント機能をオフにできることもあり、問題のある映像をアップロードしない限り炎上にはつながりにくいだろう。
 一方、Twitterは拡散力が高い半面、炎上のリスクが相対的に高い。信用を重視する金融機関が使うのであれば、炎上対策やモニタリングをしっかり行う必要がある。LINEは、電子メールやDM、電話に代わるコミュニケーションツール。「友だち」の絶対数を増やすことで、有望な潜在顧客として囲い込むことが可能だ。


カスタマージャーニーの設計が重要
 SNSは良い面ばかりが強調されやすい。各金融機関のSNS担当者は、組織の意思決定を行う役員や上司に対し、各SNSの違いをデメリットも含めて日頃から説明しておき、共通認識を醸成すべきだろう。また、SNS側の事情で機能やデータ容量などのプラットフォームが突然変更されることもある。ベンダー主催のセミナーに参加するなど情報収集に努め、変化をキャッチアップすることも求められる。
 企業アカウントでフォロワーを増やすのは容易ではない。例えばYouTubeでチャンネル登録をしてもらうのは、登録者による「この会社の発信する情報がほしい」という意思表明であり、それほどのロイヤルティを抱いてもらうまでには相当高いハードルがある。その対策としては、どうすれば継続的にコンテンツを見てもらえるようになるかというプロセスを描く「カスタマージャーニー」の設計が大事になってくる。
 SNSには、多額のコストをかけなくてもコンテンツを届けられる利点がある。地域金融機関の場合は、地域を支える取り組みを周知したり、地域の人たちに提供できる情報やサービスをアピールすることで、大手金融機関との違いを打ち出すことができる。

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