【推薦図書】『データ分析読解の技術』(菅原 琢著)
2022.12.09 04:45
【推薦者】信金中央金庫 常務理事・室谷 武彦氏
怪しいデータ分析への処方箋
「ビッグデータ」の活用、データサイエンティストの需要の高まりなど、統計学が脚光を浴びている。本書は、「データ分析ブーム」がもたらした怪しい「分析らしきもの」と、それに基づいた誤解や偏見などについて、分析の失敗例を列挙し、誤謬(ごびゅう)を見抜く「読解技術」と「分析技術」を紹介していく。
取り上げられたいくつかの事例をあげると、「美容院が多い県の住民は見栄っ張り?」、「病院の血液検査から一般市民のコロナ感染率がわかる?」、「出所者が就職すれば再犯を抑制できる?」、「新聞を読むと学力がつく?」といったものである。他にも因果関係が怪しい具体例を「問題」として提示し、その解答を読者に求めてくるというユニークな構成となっている。なお、末尾に、「解答例」は用意されているが、力量に自信がある諸氏は、「解答例」を見ずに挑戦することも可能だ。
本書は、「議論と数字のズレを感知」、「原因を特定せず、要因を列挙せよ」、「分析前の対象の理解が重要」、「データ分析の最高の味方は、現場の知識」といった多くの教訓を示す。私自身、データ分析にあたり、こうあってほしいとの願望に流され、都合の良い解釈をしていないかなど、今一度、省察したい。
(中公新書ラクレ、税込み1078円)