旧村上ファンド系のシティ社、地銀5行の大株主に浮上
2022.12.07 04:41秋田・岩手・武蔵野・八十二・スルガ銀で
旧村上ファンド系の投資会社、シティインデックスイレブンス(東京都)が複数の地方銀行で大株主となっていることが、2023年3月期の第2四半期報告書で明らかになった。判明しているのは秋田銀行、岩手銀行、武蔵野銀行、八十二銀行、スルガ銀行の5行。一方、22年3月末時点で大株主となっていた山梨中央銀行と滋賀銀行についてはシティ社の記載がなくなり、保有株式を売却したもよう。また、富山第一銀行では、著名個人投資家が大株主として急浮上。地域銀行関係者は大株主の動向に神経をとがらせている。
シティ社は22年9月末時点で、秋田銀株を24万5千株(持ち株比率は1.36%、9位)、岩手銀株を34万9400株(同2.01%、9位)、武蔵野銀株を63万3千株(同1.88%、9位)、八十二銀株を977万2千株(同2.02%、10位)、スルガ銀株を308万株(同1.63%、7位)保有。いずれの銀行も、22年3月末時点では大株主として記載がなかった。
建設セクターで1000億円の収益
シティ社は、アクティビスト(物言う株主)として知られる村上世彰氏が関わる。22年3月ごろにかけて建設セクター数社の株式を売却したことに伴い、1000億円近くの収益を確保したとみられる。市場関係者は、こうした動きについて「アクティビズムの活動として成功した事例」と話す。
富山第一銀の大株主として記載されたのは井村俊哉氏で、142万株(同2.22%、7位)を保有。同行が11月25日の9時に第2四半期報告書を公表すると株価が上昇。同日の終値は前日比80円(18.8%)高となり、ストップ高の504円で取引を終えた。
地域銀の株式に注目が集まる背景の一つには、株価の割安感がある。PBR(株価純資産倍率)は0.1~0.2倍台が大半で「株価が低過ぎる」(地銀関係者)との見方がある。こうしたなか、配当や自己株取得による総還元性向を引き上げるなど、株主還元を強化する動きが出ている。
資本政策の説明姿勢の重要性増す
大手シンクタンクの研究員は「株主還元は大切だが、中長期的な視点では成長への投資も欠かせない。投資家に対して、資本政策をしっかり説明する姿勢が一層重要になる」と指摘する。
他方、全国地方銀行協会は11月上旬に「株主総会対策講座」を初めて開催。23年の株主総会へ向けて、会員行の株主総会担当者がアクティビスト対応などを学んだ。高度な株主提案への対応が急務となっている。
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