【IRFとは?】クレカ国際ブランド3社、国内手数料公表 加盟店負担軽減へ政府要請
2022.12.01 10:38「【IRFとは?】クレカ国際ブランド3社、国内手数料公表 加盟店負担軽減へ政府要請」ニュースの要約
・Visa、マスターカード、銀聯(ユニオンペイ)の3社が、カード利用時のIRF(インターチェンジ・フィー)の標準料率を初めて公表
・経済産業省と公正取引委員会の要請に応じたもので、中小加盟店の手数料交渉やキャッシュレス化進展が期待されている
・3社のIRFは業種やカードの種類により異なり、Visaが0.5〜3.28%、マスターカードが0.3〜2.9%、銀聯が0.48〜2.3%
・JCBはIRFを設定しておらず、柔軟な仕組みにより、加盟店手数料を低く設定しやすい状況
・政府は、IRFだけでなくアクワイアラーがイシュアに支払う平均的な手数料率の開示も望んでいると見られる
Visa、マスターカード、銀聯(ユニオンペイ)のクレジットカード国際ブランド3社は11月30日、カード利用時に加盟店契約会社(アクワイアラー)からカード発行会社(イシュア)に支払われる手数料であるIRF(インターチェンジ・フィー)の標準料率を公表した。従来は非公表だったが、経済産業省や公正取引委員会からの強い要請に応じた形だ。特に中小加盟店にとっては、カード会社に対する加盟店手数料引き下げ交渉の材料となり得るもので、国内のキャッシュレス化進展につながる可能性もあると期待されている。
IRFは、加盟店から加盟店手数料を受け取ったアクワイアラーがイシュアに支払うもの。アクワイアラーは加盟店手数料のうち相応額をIRFとして支払っているとされるものの、その比率は開示されていなかった。政府は、IRF非公開を背景に加盟店手数料が高止まりしているのがキャッシュレス化を阻害していると問題視。6月7日の閣議決定では「クレジットカード会社に対し、インターチェンジフィーの標準料率の公開を求め、競争を促進する」との姿勢が示されていた。
3社が開示したIRFは、業種やカードの種類によって異なり、Visaが0.5〜3.28%、マスターカードが0.3〜2.9%、銀聯が0.48〜2.3%となっている。例えばVisaは、通常カード(クラシック)の一般利用で2.28%と設定。
カード業界からは、IRF公開への反対意見が強かった。ポイント還元事業などにより近年、すでに加盟店手数料が下がってきており、ある大手カード会社では中小店舗向けにも加盟店手数料を2.7%とするプランも用意。関係者は「市場の透明性を高めるという考えは理解できるが、これ以上の加盟店手数料引き下げは難しい」と話す。また、別の関係者からは「加盟店手数料を原資にポイント還元を強化してきた。戦略を大きく見直さねばならない可能性もある」と危惧する。
JCBはIRF設定せず
VISAなど3社と異なり、ジェーシービー(JCB)はIRFを設定していない。そのため、今回の公表の対象にはならなかった。JCBによると、同社では加盟店手数料を元にアクワイアラーとイシュアが分け合う「柔軟な仕組み」になっている。そのため、IRFの標準料率を予め設定しているVISAなどと比べて、アクワイアラーが加盟店手数料を低く設定しやすくなっている。
ただ、政府はIRFだけでなく、アクワイアラーがイシュアに実際に支払う平均的な手数料率についても開示するのが望ましいとの考えを持っているとみられる。その要請が強まり公表を迫られることになった場合には、今回の3社に加えJCBも対象となる。
ニッキンオンライン編集デスクの目
IRF(インターチェンジ・フィー)はクレジットカード決済の中核を成す収益構造だ。しかし、デジタル化の進展による決済手段の多様化で透明性と妥当性が問われている。
諸外国でもIRFの規制と開示は進んでいる。EUは2015年にIRFの上限を定めるインターチェンジフィー規則を施行し、デビットカードで0.2%、クレジットカードで0.3%を上限 とした。
なお、日本では「未来投資戦略2017」において、2027年までにキャッシュレス決済比率を40% 程度とする目標が示されている。この実現に向けて経済産業省は「キャッシュレス・ビジョン 」を策定し、加盟店手数料の適正化を重要課題として位置付けた。
ただし、IRF公表に伴う課題は少なくない。年会費を低く抑えているビジネスモデルではIRFが重要な収益源となっているため、収益構造への影響は避けられないだろう。セキュリティ対策とシステム投資の原資確保も大きな課題だ。
日本のクレジットカード市場は1961年のダイナースクラブカード誕生 以降、半世紀以上にわたって発展してきた。クレジットカード取扱高は2022年度時点で約89兆円 に達し、キャッシュレス決済の主要な手段となっている。
クレジットカード各社は、手数料収入に依存したビジネスモデルからの転換を迫られていると言えるだろう。
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