【推薦図書】『日本人のための憲法原論』(小室直樹著)
2022.12.02 04:45
【推薦者】住友生命保険執行役専務・栄森剛志氏
天才学者の憲法学講義
久しぶりに読み返してみた。読書は著者との対話というが、小室先生の講義に再び参加した気持ちになった。このような体験ができるから読書は楽しい。
本のタイトルが堅いが、旧題の「痛快!憲法学」の方が内容にふさわしい。「憲法を語るとは、すなわち人類の歴史を語ることに他なりません」と著者が述べる通り、憲法論というよりも西洋史、近代日本史の講義である。
憲法の成り立ちと民主主義は関係ないと著者は言う。国家は王政の時代から人民にとって暴力的で恐ろしい存在であった。すなわち、徴税権で財産を奪い、徴兵権で命をも奪う。ウクライナ侵攻でのロシア人徴兵のニュースを見ていると、この言葉が実感できる。生きている憲法は国家権力の暴走を食い止める「最後の鎖」なのだ。
今では当たり前の民主主義や人権という概念も近代までは人類にとって馴染みのない、むしろ受け入れがたいものだった。16世紀にジャン・カルヴァンが提唱したキリスト教の予定説が、民主主義そして近代資本主義を生み出す。その過程と仕組みをわかりやすく解説してくれる。
表層的な議論になりがちな憲法問題の見方が変わる。
(集英社インターナショナル、税込み1980円)
関連記事
関連キーワード
おすすめ
アクセスランキング(過去1週間)
- 中堅の外資生保、乗合代理店からの要求に苦慮 変額保険手数料で
- 地域金融機関、半数の250機関が預金減 金利戻りパイ奪い合い
- 八十二銀、AIモデル開発50種に 投信販売モニタリングも
- 広島銀、金利再来でALM改革 各部門の収益責任 明確に
- 多摩信金、住宅ローン168億円増 業者紹介案件が4割強
- 横浜銀や静岡銀など20行庫、生成AIの実装拡大へ 検証結果・最善策を共有
- 金融庁・警察庁、URL貼付禁止案を軟化 銀行界から反発受け 不正アクセス防止で
- カムチャツカ半島付近でM8.7の地震 一部金融機関の店舗で臨時休業
- 信金中央金庫、栃木信金に資本支援 資本注入ルールを改定
- 北国FHD、次世代「勘定系」を外販 初期導入費ゼロで28年1月から