【Discovery 専門家に聞く】「事業成長担保権」実現で中小企業が救える

2022.11.25 04:45
インタビュー
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日本動産鑑定 理事長・久保田 清氏


企業が持つノウハウや将来キャッシュフローなど無形資産を含めた事業全体を担保に融資を受けられる「事業成長担保権(仮称)」創設の検討が進んでいる。融資先の事業の中身を理解する動産(商品在庫)や売掛債権、知的財産(特許やノウハウなど)・知的資産(人材や技術など)に加え、包括的な担保権の制度化で中小企業の無形資産活用、担保取得の方法が増える。事業性評価の基準づくりや普及に取り組んできた特定非営利活動法人日本動産鑑定の久保田清理事長は「実現すれば、これまで救えなかった中小企業に手を差し伸べられる」と期待する。


在庫評価で企業の中身を見える化


融資判断で最も重要なのは、担保の有無ではなく、会社の中身。取引先の中身を把握するうえで欠かせないのが、在庫商品の評価だ。動産の価値を評価する意義は、融資可能額を決めることではなく、より実態に迫った企業分析を行うことであり、事業性評価そのものといえる。正確な企業分析があって初めて、金融機関は取引先に対して有益な経営アドバイスができるようになる。
 ただ、金融機関には動産を正しく評価できる「目利き」が乏しい。不動産と違って、担保価値を見極めるのが難しいためだ。その半面、動産担保融資は債務者とのコミュニケーションが活発になり、さらには金融機関として必須である継続的なモニタリングが必然的に行われるという特徴がある。
 米国ではABL(動産・売掛金担保融資)が資金調達手法の一つとして一般化している。日本では2005年に動産譲渡登記制度が施行され、不動産と同じように動産も登記が可能となった。さらに、07年に金融庁が金融検査マニュアルを改訂し、動産担保を不動産担保と同レベルの「一般担保」に位置付けた。こうした変化を受けて、同年に日本動産鑑定を設立し普及に努めてきたが、いまだ定着と言える状況には至っておらず道半ばだ。『事業成長担保化』への軌跡


原点はバブル崩壊後の後悔


日本動産鑑定が創立15周年を迎えた10月、事業性評価の広がりに貢献したいという思いから、自著「『事業成長担保化』への軌跡」を出版した。この書籍にも書いたが、私の原点はバブル経済崩壊後の都銀支店長としての苦い経験だ。
 取引先から資金繰りの相談が殺到したが、いくら本部に掛け合っても不動産の担保余力がない中小企業への追加融資はほとんど通らなった。あの時代に動産担保融資が可能だったら、技術力の高い中小企業を救えたのではないかという思いが、今の活動の原動力となっている。中小企業は日本の財産であり、その財産を生かすも殺すも金融機関の支援にかかっている。
 その支援の根本となるのが事業性評価であり、金融機関が力を入れている事業承継支援やM&A(合併・買収)、企業再生、経営者保証解除などにも欠かせないプロセスだ。金融機関が収益的に厳しい経営環境に置かれていることは理解しているが、リスキリング(学び直し)が重要となるなか、事業性評価の目利きを養うための人材育成費だけは削るべきではない。
 事業性評価の延長線上にあるのが事業成長担保権であり、金融機関が担保主義から卒業して不動産担保や保証人に過度に依存しない融資環境が整うことを強く期待している。

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