【推薦図書】『木のいのち木のこころ 天』(西岡常一著)
2022.11.25 04:45【推薦者】きらぼし銀行会長・北川 嘉一氏
大切なこころ
私の10年来の趣味の一つに寺社巡りがあり、これまでにも数百の寺社を訪れていて、当然、様々な建築物を目にする機会が多い中で出会ったのが本書になります。
著者の西岡常一さんは「最後の宮大工」とも言われる方で、飛鳥時代の優れた建築技術を今に伝えた方で、法隆寺や薬師寺等の修理・再建を成し遂げられています。
同書によれば、法隆寺の創建は607年ですが、その後の火災等により現存の建物は今から1300年前に建てられているとのことで、先ずはその事実に驚かされました。
同書はその理由を「宮大工の棟梁」という立場から語られたものですが、中に著者の先代からの「口伝」が引用されおり、非常に興味深いものとなっていますので印象に残った二つの「口伝」を紹介します。
一つ目は「木は生育の方位のままに使え」というものです。簡潔に言えば、建築に使う木はその生育環境によって個性があり、それを組み合わせることでより強固で長持ちする建築物になるので、それが当に「棟梁の仕事」と書かれています。
二つ目は「百工あれば百念あり。一つに統ぶるが匠長が裁量也」です。一つ目が建築材料である木の個性に言及したものであるのに対し、棟梁として統括する職人の個性にスポットを当てたもので、同様に個々の職人には個性がありそれを尊重しつつ一つに纏(まと)めるのが「棟梁の仕事」ということだと思います。この部分については、別の「口伝」があり、それが出来なければ匠長の座を去れと伝えられているそうです。
二つの「口伝」を紹介しました。「宮大工の棟梁」という別世界のことのように映るかもしれませんが、同書に記されている内容は今日にも通用するベーシックなものだと思います。尚、同書は、続編として、小川三夫氏の「木のいのち木のこころ 知」、塩野米松氏の「同 人」がありますので興味のある方は是非読んでみて下さい。
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