地域銀、半数が株主優待制度を導入 安定株主確保へ
2022.11.10 04:44
地域銀行では、安定株主を増やすために株主優待制度を導入するケースが増えそうだ。背景には企業間の株式持ち合い解消や、アクティビスト(物言う株主)の存在がある。地域銀行・グループ(G)の約半数が導入済みで、株主に預金や個人ローンの金利を優遇したり、地域の特産品などを贈るところが目立つ。株主優待は、個人投資家に好評な一方、機関投資家にとっては公平性に欠けるとの見方もある。
大和証券によると、株主優待制度を導入している地域銀は42行・G。内容は「自社サービス優待」として、定期預金の店頭表示金利に金利を上乗せしたり、住宅ローンや個人ローンの金利を優遇したりするのが一般的。
近年、個人投資家から関心を集めているのが、地域産品を選べるカタログギフトだ。各行は地元企業の商品を盛り込むことで、地域色を出すとともに、取引先の本業支援にもつなげたい考え。一部地域銀では、営業店から本部への商品の推薦が相次ぎ、選択に苦労したという。
TSUBASAアライアンス参加行では、共同企画したカタログギフトも用意し、株主が選択できるようにしている。ひろぎんホールディングスは、広島東洋カープ、サンフレッチェ広島、広島交響楽団から選んでもらい、当選者にチケットを贈る。
株主還元などを研究する野瀬義明・同志社大学教授は「(株主優待は)個人投資家へ訴求力があり、実証分析によると同額の配当よりも効用が高い」と話す。一方で、機関投資家にとってはカタログギフトの処理に困るなど相対的に不利とみる。ただ「株価への効果が高いことから(機関投資家も)容認する傾向にある」という。
株主優待制度の導入や拡充をする場合、3月末の権利確定日を意識して12月や1月にリリースを出すことが多い。「3月までに安定株主を少しでも増やすためには、年内の発表がベター。SNSで情報の拡散も期待している」(関係者)という声もある。
地域銀のこうした取り組みの背景には、アクティビストの存在もあるとみられる。野瀬教授は「優待でファン株主が増えれば、株価の下支え効果が生まれるだけでなく、広義の買収防衛にもなる」との見方を示す。
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