【推薦図書】『人口減少社会のデザイン』(広井良典著)
2022.10.07 04:45
【推薦者】元日本金融ジェロントロジー協会理事 山田 博之氏
人口減少が続く日本は持続可能か?
日本の人口は2008年に約1億2800万人でピークを打ったあと減少に転じ、2060年には約8600万人まで減ると予想されているが、少子高齢化の進行も見込まれる中、どのような社会を目指すべきか。著者は本書において、その構想・選択について多角的に情報発信している。
著者は、「『昭和』は人口や経済が『拡大・成長』を続け、集団で一本の道を登った時代、『平成』ではその成功体験を引きずった結果、政府債務の膨張、社会保障負担の問題等を先送りしてきた。このため、『令和』では『拡大・成長』から脱却し、持続可能性に軸足を置いた『定常型社会』へ転換すべき」としている。
そのためには人口減少はどこかで止まらなければならない。筆者は若い世代への社会保障強化が重要とする一方、男女の役割分担に捉われない個人主義的志向が出生率に影響すると分析。
また、シャッター通り化が進んだ日本の地方都市と「歩いて楽しめる」ドイツの街並みを比較、超高齢化を迎えた日本の街づくりの方向性も示唆している。多極集中、地方分散、コミュニティ、土地の公共性などの論点も興味深い。
筆者が指摘し、日本の人口動態グラフが示す通り、我々は歴史的ターニング・ポイントに立っている。人口減少を見据えた議論の進展に期待したい。
(東洋経済新報社、税込み1980円)