【地銀再編】長野連合の波紋 業界関係者の〝本音〟は
2022.10.02 04:40
少子高齢化や長引く日銀のゼロ金利政策など、地域銀行を取り巻く経営環境は厳しさを増すばかりだ。さらに世界的な金利上昇(債券価格は下落)局面にあり、有価証券運用においては実現損を出したり、含み損を抱えたりするなど苦戦を強いられている。こうしたなか、八十二銀行と長野銀行の経営統合が9月28日に発表された。2023年6月をめどに八十二銀を完全親会社、長野銀を完全子会社とし、その約2年後に合併する計画だ。地域銀の業界関係者からは、経営統合の背景や地元経済への影響についてさまざまな見方が出ている。
「防衛的な意味合いがあるのでは」。八十二銀のライバル行と長野銀が経営統合する前に、先手が打たれたとみるのは東日本地区の地銀行員。「八十二銀は貸出金の地元シェアが高い。だが、そこにライバル行が参入するのは脅威だろう」と話す。「金融マップ2022年版」(金融ジャーナル社発行)によれば、長野県内における21年3月末の貸出金シェアは八十二銀が44.4%、長野銀が9.3%。将来的に合併が実現すれば、貸出金シェアは50%を超える。
西日本地区の第二地銀行員は「(高いシェアを背景に)経営体力を消耗させる金利競争を避けられるほか、取引先数の増加によってビジネスマッチングなどで効果が期待できる」との見方を示す。一方、県内の銀行が1行になることで企業の資金調達先の幅が狭まることを懸念する声もあり、「地域の企業は規模や財務内容がさまざま。企業側に、ある程度の選択肢が必要だ」(東日本地区の地銀行員)。
八十二銀の経営判断に、一部で報じられたアクティビスト(物言う株主)の存在が少なからず影響したとの見方も。西日本地区の地銀行員は「経営統合を水面下で進めるよりも、早めに公表して資本政策を明示する必要があったのでは」と推察する。
地域銀を取り巻く経営環境に明るさは当面見えず、経営統合は続くとみられる。ただ、そのボトルネックになりそうなのが提携だ。全国では複数行による戦略的提携を結ぶケースが増えている。ある地銀行員は「(経営統合する場合)従来は自行と相手行で話が済んだが、提携先の銀行に根回しなど配慮が必要になっている。銀行独自の判断を鈍らせる要因の一つだろう」と語った。
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