興せ 日本株(中)アクティブ投信の意義
2022.10.01 04:46
日本株アクティブファンドの意義が問われている。金融庁が5月に公表した「資産運用業高度化レポート」によると、同ファンドの分析結果を踏まえ「大手資産運用会社において中長期にパフォーマンスが低迷するファンドが存在する」と指摘。運用会社におけるプロダクトガバナンス体制の実効性が問題視された。低コストな海外株式インデックスファンドに投資資金が集まる一方で、個人投資家を日本株投資に振り向かせるために、アクティブ投信を立ち上げる動きも出てきた。
野村アセットマネジメントでは、21年8月にさまざまな部署から若手社員を中心に、計10人からなるプロジェクトが始動し、翌年4月に新規設定されるファンドの企画が議論された。若手社員の清水彩也夏さんは、リターンだけでなく「手触り感のある、特にこの企業を応援しているような体験を届けたい」という思いから、若い経営者に着目した日本株ファンドの組成に至ったと明かす。
同社の「日本次世代経営者ファンド」では、経営者の年齢などでスクリーニングを行ったうえで、継続的な業績の改善や組織の機動的な変化などが見られる企業を選定する。販売は主要ネット証券などのネットチャネルに限定。特設サイトで投資先の経営者のインタビューなどを掲載することで、ファンドのコンセプトを共有する。中村麻里アドバイザリー運用部長はマーケティング手法において、「どのように共感を得ていくかが一つのトライアル」と指摘する。
社会とつながりを生む投資
「特に日本国内の投資家の人たちの目が日本株に向いてないのが、残念に思っている」ーー。三井住友DSAMで「アクティブ元年・日本株ファンド」の運用を担う古賀直樹シニアファンドマネージャーは、「資産運用のなかでアクティブ投資を一つの選択肢に入れて欲しい」と訴える。
同ファンドは、古賀氏を含む4人のファンドマネージャーによる企業取材を通じて発掘した企業に投資を行う。年間延べ700件程度の企業取材を行う古賀氏は「自分たちの生活の改善や社会課題を解決していく企業に投資をすることで、その成果を十分に得ることができる土壌はある」と日本株のポテンシャルを語る。
ある市場関係者は外国株式インデックスファンドを通じて、効率的に投資をするのは「自然」としつつも、「世の中に対するつながりという意味での投資はある程度あったほうがいい」と話す。株価指数に投資をするだけでは得にくい「経済に参加する」「企業を応援する」といった思いを広げ、日本経済の活性化につなげることも、直接金融が果たす役割だ。
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