広がる「ちいきん会」活動③ 香川発「テラロック」

2022.07.24 04:52
広がる「ちいきん会」活動
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多数の参加者が集まった第1回テラロック

組織の肩書を外し、主体的に行動する個が集う交流会「テラロック」。独自に育んだ交友関係を基盤に2019年7月から香川県内でこれまで9回開催し、650人が参加。金融、教育、まちづくりなどのテーマを設け、毎回、予定調和なしの熱い議論が交わされます。


20年5月には、「ちいきん会」とコラボし、金融をテーマに初めてオンライン形式でテラロックを開催。ちいきん会発起人の菅野大志さんとは、互いに共鳴し、鼓舞し合う関係です。今年3月の「第6回ちいきん会」も連携して開催しました。そのほか官民さまざまな団体との共催イベントでは、延べ1500人以上を集めました。


私の活動の原動力は「分断された異質な世界をつなぎたい」との思い。誰もが個性を発揮できるやさしい社会が理想です。しかし現実には、意識を高く持つことを揶揄(やゆ)する風潮、同調圧力が強く変化や失敗を嫌う空気がまん延しています。


テラロックは「個を解放する場」。参加資格は「情熱」のみ。情熱を持つ個が集い、異なる価値観や感性が混ざり合うことで、新しい物事の捉え方が生まれます。それが個の行動変容を促し、より良い社会をつくる推進力になると信じています。



◇共鳴◇


テラロックの原形は、16年12月に開いた若手公務員60人を集めたフォーラム。地方自治体の若手職員との対話を通じて「他自治体と横のつながりがない」「地方創生を本音で議論できる場がない」という課題が浮かび上がりました。個を解放する場がないのです。すぐに職場の上司にかけあい、同僚とフォーラムを企画しました。


18年2月に第2回目のフォーラムを開催しました。全国47都道府県の地方自治体職員と国家公務員が集まる「よんなな会」発起人の脇雅昭さんら約170人が参加。仙台市から駆けつけた菅野さん(ちいきん会発起人)と私はこの場で出会いました。脇さんと菅野さんも初対面でした。「情熱」は距離をたやすく越え、共鳴するのです。



◇異端◇


大学生や地方自治体職員とチームを組み、内閣府主催の「地方創生☆政策アイデアコンテスト」で2年連続第1位(17・18年)になると、「変な公務員」と呼ばれるようになりました。その頃から、社会や組織に「異端」扱いされている人との対話の機会が増えました。情熱を持ち主体的に行動する人たちは、冷笑的でリスクを嫌う風潮に生きづらさを感じていました。


組織の肩書から解放され、個と個とが信念をぶつけ合える場をつくろうと19年7月に「テラロック」を立ち上げました。私の活動の原動力は、価値観がかけ離れた人との対話から得られたものです。それまで私は「自分が見たい世界」しか見てこなかったことに気づかされました。その経験から、異質な人たちとの対話の場が社会にもっと必要だと思い行動したのです。



◇金融の未来◇



第5回テラロックの登壇者ら

20年5月には「疾風勁草 試される金融」をテーマに第5回テラロックを開きました。登壇者は、渋沢栄一の玄孫(やしゃご)でコモンズ投信会長の渋澤健さん、「捨てられる銀行」シリーズ著者の橋本卓典さん、ことでんグループ代表の真鍋康正さん。元金融庁長官の遠藤俊英さんもゲストで登場しました。


個人の幸せ、社会の持続可能性に対し、金融がどのような役割を果たせるかについて議論を交わしました。渋澤さんは「できるかできないかではなく、何をやりたいか。やりたいことをできるようにすべきだ」と述べられました。



第6回ちいきん会で渋澤健さん(左)と対談する筆者


◇ロックンロール◇


テラロックは、固定観念を揺さぶることを目指しています。情熱が起点の個人の活動で、当然、前例はありません。私自身、思考の枠を固めないよう行動を続け、地方放送局のニュースコメンテーターや地域情報誌の連載にも取り組みました。公務員の個人活動としては異例でした。


テラロックを面白がり、多様な運営メンバーが集まりました。レポート執筆、チラシ作成など自主的に無償で運営を手伝ってくれました。また、立ち上げ当初は想像できなかったことですが、官民さまざまな団体からイベント共催の依頼がくるようになりました。殻を破り一歩を踏み出せば、新しい世界が広がります。


コミュニティーとコミュニティーとの接続は重要です。例えば、「地域の元気のために行動する」地域金融に関わる人たちのネットワークに参加することで、知的創造のヒントを得られます。ちいきん会で出会った方と協働することもあります。徳島大正銀行の熱意ある銀行員とは、起業家を招いたイベント開催でともに情熱を注ぎました。


活動を通じて、一つ確信しています。新しい価値観や物事の捉え方をつくるのは、能力、スキル、肩書、権限ではなく「情熱」なのだと。


 



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