返還25周年 ビジネスチャンス拡大 ヤウ・香港貿易発展局日本首席代表

2022.07.01 12:30
インタビュー
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ベンジャミン・ヤウ日本首席代表
ベンジャミン・ヤウ日本首席代表

香港は7月1日に中国返還25周年を迎えた。返還前から世界中で香港の貿易促進に取り組んでいる香港貿易発展局。ベンジャミン・ヤウ日本首席代表に香港の現状やビジネスチャンスを聞いた。


25年をどう振り返りますか。


「SARS(重症急性呼吸器症候群)や新型コロナウイルスによる打撃はあったものの、力強い回復と経済成長を遂げ、ニューヨークやロンドンと並ぶ国際金融センターとしての地位を確立した。『一国二制度』の成功が背景にあり、香港と中国の両者の繁栄に不可欠な役割を担っている」


日本との経済関係は。


「主要貿易相手国の6位が日本で、貿易総額は約500億米ドルにのぼる。香港における外国企業の拠点数は中国を除いて最も多い(21年6月時点で1388社)。インバウンドの交流も活発で、コロナ前の19年は香港の人口(約750万人)の3人に1人が日本を訪れている」


これから香港はどう発展していくのでしょうか。


「香港とマカオ、広東省の九つの都市で形成する広域経済圏『グレーターベイエリア(GBA)』の玄関口として期待が高まっている。GBAは人口約8600万人で、GDPは世界ランキング9位に匹敵する約2兆米ドルの巨大マーケットだ。資金調達などの金融機能や人材確保の環境が整っている香港を経由することで、一国二制度の柔軟性を生かしながらGBAやアジア全体へのビジネス展開を探れる」


「香港はヘルスケアやテクノロジー、フィンテックなどの有望産業が集積し、近年はIPO(新規株式公開)も活発化している。バイオテック企業がメイン市場の財務基準を満たしていなくても上場できる特例を18年から設けている」


交通インフラも着々と整備が進んでいます。


「香港からマカオ・珠海を結ぶ大橋や、深圳・広州を結ぶ高速鉄道が18年に開通してアクセスが飛躍的に向上した。香港国際空港では、もうじき第3滑走路の運用が始まる」


日本の地域金融機関に期待することはありますか。


「従来から香港への企業進出を手掛けていただいているが、今後はGBAのビジネスチャンスを認識したうえで、香港を経由するメリットやマーケットの優位性を企業にアピールしてほしい」


「当局ではイベント開催などを通じて情報発信も強めている。毎年香港で開くアジア金融フォーラムは、海外投資家などとマッチングできる機能を備えている。取引先企業のニーズに応じて、物流やヘルスケア、ITなど産業別のイベントも用意している。10月には東京で日本企業の活躍事例を紹介するセミナーを予定している」


ベンジャミン・ヤウ氏=99年英国ケンブリッジ大卒、01年早大国際部日本経済文化研究課程修了、同年香港貿易発展局入局、07年東京事務所長、08年大阪事務所長、17年韓国代表、21年2月日本首席代表。

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