金融改革、突如の「白紙」 「説明なし」で自民が怒り

2022.06.04 04:45
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自民党の政調全体会議。6月3日にも開かれ、「骨太」と「新しい資本主義」を議論した
自民党の政調全体会議。6月3日にも開かれ、「骨太」と「新しい資本主義」を議論した

政府が近く閣議決定する規制改革実施計画から、金融庁が所管する項目が削除される見通しになった。自民党の財務金融部会に対する計画案の事前説明がなかった経緯が問題になり、とりまとめ直前に構成を見直す異例の事態に発展。政策自体にストップがかかるわけではないが、政・官の関係や政策づくりのプロセスを問い直す動きにつながっている。


「我々は国民の代表。省庁が委員を選ぶ会議の検討結果を伝えないのはあり得ない」ーー。6月3日、財金部会に出席した議員は、怒気を帯びた声で金融庁幹部らに訴えた。


計画案には金融分野の改革項目として、セキュリティトークンが流通する市場の環境整備、金融商品取引で交付する書面の原則電子化ーーなどが並んでいた。だが、6月6日に開かれる政務調査会の全体会議に示される修正案では、それらが消える。


何があったのか。発端は6月1日の政調全体会議。「骨太の方針」、「新しい資本主義」実行計画の案と合わせ、規制改革実施計画案が示された。


声をあげたのが井林辰憲・財金部会長。規制改革について事前説明を受けておらず、金融分野の項目を部会で審議するプロセスも踏んでいないため、「党内手続きに瑕疵(かし)がある」と強調した。規制改革として取り上げる必要がなく、通常の金融行政で対応できる項目が目立つように見えたことも問題視。財金部会を含む一部の部会が改めて審議する流れになった。


一方、国会の会期末は6月15日に迫り、計画の閣議決定まで残された時間は少ない。このため、井林氏は金融庁が単独で所管する項目に限り削除する案を提示。「自分が責任を負える範囲で対応する」と、事業成長担保権の創設など他省庁と共同で取り組む政策は原案通り記載を認めた。


金融庁を含む各省庁は、従来も規制改革実施計画の所管項目を抜き出して各部会に説明するプロセスを踏んでいない。「骨太」などよりも文書を作る工程で各省庁の関与が少なく、審議を提案する慣習はなかった。


今回、こうした政府・与党間の手続きに一石が投じられたものの、計画からの削除が理由で政策が中止に追い込まれることはなさそうだ。削られる項目が、他の閣議決定文書に書き込まれているケースもある。


金融庁幹部は「見過ごされてきた部分について指摘を受けた」と反省しつつ、「政策の中身は問題ないと言われている」と前を向く。事務年度末に訪れた「白紙」の衝撃を乗り越えられるか。

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