【ニュース深掘り】地域銀の株主還元方針を問う(上)

2022.05.29 04:45
株式市場
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京都銀行など地域銀行4行に対して配当の積み増しを求める英投資ファンドの株主提案が波紋を呼んでいる。4行は取締役会で反対を決めたものの、還元強化を求める他の株主から一定の賛同を得る可能性もある。6月の株主総会での賛成率に注目が集まる。


株主提案を提出したのは英シルチェスター・インターナショナル・インベスターズ。割安株に長期投資する手法を得意とするアクティビスト投資家だ。1995年に始めた日本国内上場企業への投資残高は2022年3月末時点で約1兆9000億円に上るという。


提案先は岩手銀行と滋賀銀行、中国銀行を含む4行。要求内容は、(1)「コアの融資事業」からの純利益の5割(2)各行が受け取る株式配当の全額――を特別配当として還元すること。保有株の評価額が地域銀トップの京都銀は、受け取り配当が「22年3月期に約200億円と予想」(シルチェスター)され、影響は特に大きい。


4行は5月13日までに、それぞれの取締役会で提案への反対を決めた。理由について、岩手銀は「中長期的な企業価値の向上につながらない」と主張。利益は配当だけでなく、地域経済を支えることや成長投資にもバランスよく配賦する必要があるとの考え方を示した。この姿勢は4行に共通する。


一方、シルチェスターは各行の自己資本が相応にあるなかで、経営効率を示すROE(自己資本利益率)や還元率の低さを問題視しているもよう。今回、同じく大口保有するコンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)とおきなわFGには提案を出さなかった。SBI証券の鮫島豊喜氏の試算によると、両グループの22年3月期の総還元性向は4行を上回った。


今後の焦点は、6月の株主総会での賛成率だ。地域銀関係者からは「あり得ない提案内容」との声が多いが、鮫島氏は各行の年間純利益の範囲内での配当要求となっているため、「額自体はものすごく過大とも言えない」と指摘する。


各行の株主構成の4割前後を占める個人と外国人には、還元強化を求める株主も一定数いるとみられる。提案は否決されるとの見方が大勢だが、別のアナリストは「30~40%の賛成率もあり得るのでは」とみる。

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