日銀、政策金利を据え置き 賃上げ基調の持続性「もう少し確認」

2025.10.30 12:15
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米関税の影響について説明する植田総裁(10月30日、日銀本店)
米関税の影響について説明する植田総裁(10月30日、日銀本店)

日本銀行は10月29、30日に開いた金融政策決定会合で、政策金利である無担保コールレート翌日物を「0.5%程度」に誘導する方針の維持を決めた。政策金利の据え置きは6会合連続。


高田創、田村直樹両審議委員は、「0.75%」への追加利上げを求めて反対。高田委員は「物価が上がらないノルムが転換し、『物価安定の目標』の実現がおおむね達成された」との理由で、田村委員は「物価上振れリスクが膨らんでいる中、中立金利にもう少し近づけるため」として、利上げに関する議案を提出したが、反対多数で否決された。


会合結果と同時に公表した展望レポート(経済・物価情勢の展望)では、物価の先行きについて、「生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)」の前年度比上昇率(中央値)を、予測する全期間(25~27年度)で据え置き、2025年度は「2.7%」、26年度は「1.8%」、27年度は「2.0%」とした。


国内経済は、GDP(国内総生産)の実質成長率について、25年度が「0.7%」と前回から0.1ポイント上方修正。26、27年度は不変だった。


春闘初動で「自動車」収益注目


植田和男総裁は会見で、追加利上げのタイミングに関し、来年(26年)の春闘に向けた賃上げモメンタム(勢い)の確認を重要視する姿勢を強調。一方、企業の賃金設定行動の見極めに関しては、「春闘全体(の姿が見える時期)を待つわけではなく、『初動のモメンタム』を中心に見ていく」と〝基調の持続性〟に判断の的を絞って説明した。「賃上げのばらつきを確認することは大変大事」として、地域間や事業規模を踏まえた賃上げの波及度合いに目を配る姿勢も訴えた。


そのうえで、米関税の影響が大きい自動車産業を念頭に置きつつ、2025年度の収益見通しを慎重に見極める考えを示し、「もう少し(関連する)データや情報を集めたい」と繰り返した。


高市早苗政権発足を受けた政府との関係については、日銀法第4条を踏まえ、「十分に意思疎通を図る必要がある」としながら、「(政策委員の多くが)納得いけば、政治状況に関わらず(政策)金利を調整する」と、自立的な政策運営姿勢を主張した。


米関税政策を巡っては、「関税の影響はゆっくりと出てきている」との見方を述べたうえで、「米経済は底堅い」と認識。半面、「ダウンサイドリスクはやや低下しているが、依然として継続している」との懸念もあわせて語り、海外経済の先行きを引き続き注視する意向を表した。


一方、国内の物価動向では、昨今の食料品価格高騰で企業や家計の中長期のインフレ期待が「ものすごく上がっている状況ではない」とみて、「ビハインド・ザ・カーブ(政策対応の後追い)に陥る懸念は高まっていない」と、市場で強まる指摘を否定した。


また、展望レポートの表現に関し、「一部に(政策委員の)反対があった」と明かしたうえで、見通し全体は「これまでのメインシナリオに沿ったもの」と見立てた。


ターミナルレート(政策金利の最終到達点)に関わる中立金利の水準については、「現時点では絞ることができていない」と、これまでのスタンスを引き継いだ。


ベッセント米財務長官による日銀の金融政策運営への発言を受けた政策委員会の反応では、「『主な意見』や『議事要旨』を見てほしい」と直接的な言及を避けた。

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