【推薦図書】「大坂堂島米市場 江戸幕府VS市場経済」(高槻泰郎著)
2025.10.24 04:30 
                            【推薦者】キャピタル・アセット・プランニング代表取締役・北山雅一 氏
天下の台所が生んだ先物取引
世界の金融先物市場の先駆けは、江戸時代の大坂堂島の米会所に始まる。本書は、その起源と江戸幕府の関係をわかりやすく解説する。当時、大坂は「天下の台所」と呼ばれ、全国から年貢米が集積する経済の中心地であった。高槻泰郎の著書「大坂堂島米市場」は、この地で発展した堂島米市場の成立と発展を通じて、日本における市場経済の原型を描く。
米は当時、経済の基軸であり、米価は政治や社会に大きな影響を与えた。堂島では現物の米を取引するだけでなく、「米切手」と呼ばれる証券を媒介に帳簿上の取引を行う「帳合米商い」が発展した。これは現物を伴わずに将来の米価を見越して売買する先物取引の性格を持ち、価格の安定や流通の効率化をもたらしたとされる。市場では「正米商い」(現物・現金決済)と「帳合米商い」(相殺・清算取引)が併存し、商人たちは独自の信用制度や清算システムを構築していた。
この堂島米市場の仕組み、制度が、シカゴ・マーカンタイル取引所、シカゴ商品取引所に受け継がれ、世界の金融先物市場の爆発的拡大につながる。では、なぜ、東京、大阪が、世界の国際金融センターに成長しないのかを考えさせられる。
(講談社 税込み1210円)
