【推薦図書】「十角館の殺人」(綾辻行人著)
2025.10.17 04:30
【推薦者】荘内銀行取締役常務執行役員・井上義紀 氏
推理小説とは、知的な遊びの一つ
本書は1987年が最初の刊行でベストセラーの推理小説なので読まれた方も多いと思います。2025年の正月に改めて読んだきっかけは、業務上「論理的な思考・説明」が求められるもののいまだに苦手であり、論理的思考に役立つ書籍はないかと検索したなかに推理小説の本書がありました。
あらすじは十角形の奇妙な館が建つ孤島を大学生の男女7人が訪れ、やがて連続殺人……というクローズド・サークルものです。礼儀としてネタバレになることは控えますが、さまざまな解説における本書の代表的な評価としては、本格ミステリーとしての完成度の高さ・フェアプレー精神が貫かれている・読者に解決のチャンスが平等に与えられている・謎が論理的に解ける設計・個性ある登場人物たちの会話等が挙げられます。業務上とはかけ離れてしまいましたが知的な謎解きを楽しみたい方にお薦めしたい一冊です。
推薦図書に挙げたもう一つの理由。本作品は1980年代、昭和の大学生たちが主役の話でやたらとコーヒー&喫煙シーンが登場します。私と同じく昭和の時代に大学生活を送り、かつ昨今肩身が狭い思いをしている愛煙家にとっては、本書に触れることで非常にノスタルジックな気分を味わえるひとときになると思います。
(講談社文庫 税込み946円)