日銀総裁、企業景況感「良好な水準」 利上げ焦点〝第一に米経済〟 大阪講演で
2025.10.03 11:44
日本銀行の植田和男総裁は10月3日、前々日(1日)に公表の9月短観(全国企業短期経済観測調査)で明らかになった企業の業況感について、日米関税交渉合意による先行きの不透明感後退で「良好な水準」との認識を示した。企業収益に対しては「既往ピーク並みの高水準」との見方を述べ、設備投資も企業ヒアリングなどを踏まえ「増勢を維持している」と説明した。大阪市内で開いた経済団体との懇談会で語った。
植田総裁は、追加利上げに向けた「当面の点検ポイント」を並べて説明。〝第一〟に海外経済を挙げ、「米国」の動向にフォーカスした。米関税政策の影響や米連邦準備制度理事会(FRB)の政策対応に視線を注ぎ、国内経済・物価に及ぼす影響などを丹念に確認していくスタンスを強調した。そのうえで、海外経済の今後の展開や金融市場の動向に対し、「引き続き、注視していく」構えを訴えた。
国内の物価や賃金・価格設定行動に関しては、「これまでに蓄積された高水準の企業収益」をベースに、「賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムは、基本的に、今後も維持される」との見通しを表し、本支店網を通じた企業の声を「きめ細かく確認していく」考えを語った。
今後の金融政策運営では、「現在の実質金利がきわめて低い水準にある」ことを示し、日銀の展望レポート(経済・物価情勢の展望)の見通しが実現する度合いに応じて、「引き続き、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と段階的利上げスタンスを維持。国内外の経済・物価情勢や金融市場の動向などを「丁寧に確認し、予断を持たずに(政策)判断していく」方針を述べた。
IMFで〝生の声〟聞く
植田総裁は午後の会見で、米関税政策による影響の不確実性は「依然としてかなり大きいと判断している」と述べる一方、政策対応の時期については「全てのハード(統計)データを把握してからだと、すごく先になるのは明らか」と語り、次回(10月29、30日開催)の金融政策決定会合を含め、必要なハードデータやヒアリング情報、専門家の見方を確認したうえで判断していくスタンスを訴えた。
長引く食料品価格高騰を背景とした「ビハインド・ザ・カーブ(政策対応の後追い)」のリスクでは、物価の上振れにつながる中長期のインフレ期待を押し上げる可能性について「今のところは高くない」との見方を示した。
米政府機関閉鎖に伴う経済統計の公表遅延に対しては「深刻な問題」と指摘。そのうえで、雇用統計の発表延期を例に、「同種のデータからある程度は類推できる」ことや、(10月後半の)IMF(国際通貨基金)年次総会で現地の政策担当者や金融機関関係者から「生の情報」を得るなど「様々な方法で情報を収集したうえで判断していく」と考えを語った。
また、米経済については「ここまでのデータを見る限り、労働市場以外は堅調に推移している」と分析。公的・民間機関の標準的な見通しを踏まえ、「上振れて着地するリスクもゼロではない」と付け加えた。
9月短観の評価では「一言でいえば、良好ないし堅調」と表現しつつ、「米関税による不透明性は残っている」との見方も述べた。「今回の短観が強いインフォメーションを持っているかというと、必ずしもそうではない」とし、ヒアリング情報などを重視するスタンスを強調した。
5年の総裁任期が10月で折り返しを迎えることに関しては、「大規模金融緩和からの出口をある程度、進めることができた」と振り返る一方、「消費者物価の総合指数の動きが、(日銀が)基調と呼ぶインフレ率を長期間大きく上回り、コミュニケーション上の問題をいろいろなところで発生させた」と自戒した。任期後半の課題や目標については、2%インフレ目標を「持続的・安定的に達成する状態に少しでも近づけること」と語った。
※総裁会見の内容を追記しました(16時01分)
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