不祥事どう防ぐ 横領や詐欺を行う〝いい人〟

2025.10.04 04:10
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先日、某金融機関における横領事件の報道で「まさか、あんないい人が」といった発言があった。


そうなのである。金融機関で横領・詐欺等を行う人物について、その同僚にヒアリングすると「まさか、あんないい人が」「いい人だと思っていたのに」といった発言を多く聞く。


ではなぜ金融機関に勤務する「いい人」が横領・詐欺等の行為を行うのか。以下、いくつかの理由を述べてみよう。


まず、「いい人」になるのは、横領・詐欺等の行う前というよりも行ったあと「いい人」になるケースが多い。つまり、自分は横領・詐欺等の犯罪行為を行っており、いつそれが発覚するのかビクビクしている状況で、上司や同僚・後輩と何かトラブルを起こせば、目を付けられる。目を付けられることから、自分の行っている犯罪が発覚してしまうのではないかといった不安感からおとなしくしようとする。そうした行動が、周りの同僚等からみればあまり目立たず、黙々と仕事をしていることから結果的に「いい人」との印象を持つ、ということである。


次に、横領・詐欺等の犯罪行為を行っていると、先に述べたとおり「いつ発覚するのか」といった不安感から常に犯行現場である職場にいたいと思う。なぜなら、仮に発覚してもその場にいればいろいろな言い訳をして、ごまかすことができるのではないかと考えるからである。


こうしたことから、横領・詐欺等を行っている人は休暇を取りたがらない。特に、長期の休暇は職場を長期間不在にすることになるため、嫌がる傾向にある(こうした人はできるだけ長期の休暇取得を後ろ倒しにする傾向がある)。


そのため、長期の休暇中であっても引き継ぎ者を心配する振りをして、私的に出勤してみたり、お菓子や旅行のお土産等を休暇中にもかかわらず、わざわざ持参してみたりすることがある。


こうした行為が上司や同僚・後輩から見れば「休暇中にもかかわらず、引き継ぎ者を心配し、わざわざ職場に来るなんてなんて仕事熱心」「わざわざお土産等を差し入れするためだけに休暇中職場に来るとは、なんて素晴らしい人」と思ってしまうのである。


しかし、実際には自分の犯罪行為が発覚していないかを確認するために来ているだけなのである。


皆さんの周りに「ちょっと前まで上司とトラブルを起こしたりしていたのに最近は同僚にいろいろと配慮したりするようになった」なんて人はいませんか。


ひょっとしたらひょっとするかもしれません。管理職の方々、このキーワード「いい人」を忘れずに。


金融監査コンプライアンス研究所代表取締役 宇佐美 豊

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