【推薦図書】「量子コンピュータが本当にわかる!」(武田俊太郎著)
2025.09.19 04:30
【推薦者】東和銀行取締役専務執行役員・鈴木信一郎 氏
テクノロジー深化との伴走
2024年秋の金融庁レポートによると早ければ今後5年程度でCRQC(暗号解読に利用可能な水準のコンピューター)の登場が見込まれることから、金融機関にはHNDL(暗号技術で保護されたデータを事前に収集して、後からCRQCにより当該データを攻撃する行為)も念頭に置いた態勢整備が求められている。
そうした状況が本書に触れた経緯であるが、当分野の研究開発者である著者によって、量子力学の基本概念や同コンピューターの計算プロセス、並行的に開発が進む4方式(超電導回路・イオン・半導体・光)のプラスマイナスなどがコンパクトに解説されている。
極めてミクロな物質である量子が持つ「波」の性質を利用して、複数の計算パターンを同時並列的に行うことで圧倒的な処理スピードを実現したり、波と波の干渉により正解パターンを絞り込むメカニズム、開発面の難しさなどが言及されている。
さて、既存のコンピューター技術や生成AI(人工知能)と並んで量子コンピューターについても急ピッチで開発が進んでいる。地域金融機関職員としてそれぞれの技術特性の概要把握に努めつつ近未来の業務影響をフォローしていきたい。
(技術評論社、税込み2068円)