不祥事どう防ぐ プライベートを把握する重要性
2025.09.06 04:10
この連載の2回目(5月2日号)で不祥事の兆候や事故者の性別による違い等について述べた。今回はその延長線であるプライベートを把握する重要性について考えてみたい。
事故者が横領や詐欺行為を行う要因・背景としてストレス要因があることは前にも述べた。では、このストレスはどこで、いつ発生するのか。
みなさんも朝から上司や先輩が不機嫌で何か近寄りがたい空気を醸し出しているので近寄ったり、相談したりすることを一時的にやめたことが一度や二度あると思う。
その不機嫌な原因が後にプライベートな出来事(例えば夫婦げんかとか親子げんか)であるといったこともよく聞く話である。
つまり、当たり前だがストレスは何も仕事中だけに発生するのではなく、プライベートの時にも発生しているのである。そう考えれば、見えてくることがある。それは、いくら仕事中にストレスがないように見えても実はプライベートのストレスが原因で不祥事に至ることもあるということである。
過去、地域金融機関で発生した不祥事で、その後逮捕・起訴された裁判例では「仕事と家庭のトラブルが原因でストレスがたまっていた。そのストレス発散のためキャバクラでお気に入りの女性をナンバーワンにするためお金が必要となり、借金をするようになり最終的に顧客預金に手を付けるに至った」といった趣旨が検察の冒頭陳述で述べられている。
このようにプライベートで何かトラブルを抱えていると、職場では何事もないように見えても実はストレスの塊状態でいつ不祥事に至ってもおかしくない行職員が多数いることもまた事実である。
筆者の経験でも多くの事故者は実質家庭内離婚、壮絶な親子関係などプライベート上の何らかのトラブルを抱えていた。
当然、プライベートについて根掘り葉掘り聞いたりすることは難しく、場合によってはハラスメントと捉えられかねない。
しかし、もし同僚、部下との会話の内容が仕事のことしか話をしていないのであれば、要注意である。
仕事終わりの飲み会などインフォーマルな会話の機会が減っていることを鑑みれば、特に支店長等管理職は部下に対して、仕事以外の話題で会話をすることにより、今まで知らなかった面を発見したり、社内の人間的つながりがわかったりすることでその部下のプライベートな面や性格からストレスの状況を推察することも可能であろう。プライベートに係る情報をできるだけ得ることが不祥事を防ぐ第一歩になるのである。
金融監査コンプライアンス研究所代表取締役 宇佐美 豊