【眼光紙背】 労働力としての外国人論
2025.08.14 04:30
先般の参院選などでにわかにクローズアップされた政治・社会課題の一つが外国人政策だろう。「日本人ファースト」を掲げる政党が磁場となって論争を巻き起こした。実は、経済面でも非常に重要な問題である。成長を下支えするうえで、労働力としての外国人をどう考えるかという視座においてである。
政府は、特定技能制度の見直しなどで外国人労働力を補完的に拡充してきた。ただ、長期滞在や家族の呼び寄せが難しいなどネックも多い。制度を小手先だけいじって外国人労働者を一時的に取り込むだけでは、成長の押し上げにもつながらないだろう。
まずは職を求める日本人の雇用がしっかりと手当てされる諸制度の整備が必要なのは論をまたない。ただ、先般の当コラムでも少子化問題に触れたが、もはや日本の人口減少は不可逆的だ。国力を維持するために、熟練技術者などの外国人労働力を積極的に取り込むことが検討されてしかるべきではないか。
その文脈には移民政策の議論も自然と上がってくるはずだ。かねて日本では移民政策が存在しないとすら言われてきた。野村総合研究所の木内登英氏はレポートで、「タブー視せずにまずは議論を進めていく必要があるのではないか」と提言している。中長期のビジョンを明確にしながら戦略的かつ慎重に考えることが重要とも指摘した。同感だ。
外国人労働者の受け入れ拡大にあたっては、慣れぬ異国で安心して働くためにも差別や排斥を招かぬよう注意しなければならない。一方で、特定技能制度のもとでも若干問題化したように、国民が不安を抱く一部外国人の不法滞在などの違法行為や犯罪に目を光らせる必要がある。要はバランスである。
外国人政策が今後どうなるかは、各党の主張もさまざまで、政局が流動化するなか政権運営の枠組み次第でもあるだろう。ともあれ、日本にとって、いよいよ避けて通れぬ関門となるのは間違いない。
(編集委員 柿内公輔)
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