【ニッキン70周年企画(最終回)】池田泉州HDの01銀行、「求められる銀行」模索
2025.08.17 04:40
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日本金融通信社(ニッキン)は2025年8月27日、設立から70年を迎えます。本紙第1号が発行された1955年は、戦後復興を遂げた日本が高度経済成長期に突入する転換の年でした。あれから70年。急速な人口減少、慢性的な人手不足、デジタル化の進展など、日本は再び転換点を迎えています。新たな環境に適応するには、リスクを伴う挑戦が不可欠。「ニッキン70周年企画」の連載記事では、次の時代への「橋渡し役」として存在感を高める金融機関の姿を追いながら、10年後の金融界を展望します。連載第10回の今回は、最終回の今回は、池田泉州ホールディングス(HD)が設立したデジタルバンク「01(ゼロワン)銀行」を取り上げます。
都市部も人口減に危機感
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によると、2050年の大阪府の人口は20年比で17.8%減少する。加速度的な人口減少を背景に、地域金融機関に問われ始めた経営の持続可能性。東京都に次ぐ大都市でも、顧客基盤が先細ることへの中長期的な危機意識は他の地域と変わらない。
SaaSデータを融資に
池田泉州ホールディングス(HD)幹部は、営業エリアについて「(全国的にみれば経済が縮小する)速度は遅いが、その分、競合先の進出も多い」と厳しさを口にする。そのうえで、「競合が少ない領域に出ることが、結果としてホールディングスの成長と収益に結び付く」とデジタルバンクを開設した狙いを語る。
同HDが7月に開業した「01銀行」は、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)上にある企業の活動データを融資判断に活用する。SaaSを提供するさまざまな事業者と連携し、スタートアップを含む中小企業などの利用者の事業状況をタイムリーに把握。決算書をはじめとした「過去」を材料とする従来の審査から、「現在」の情報をもとにした融資の形を作る。
リアル銀と相乗効果を
ただ、見据えるゴールは、これまで手を差し伸べられなかった層へのファイナンス機能の提供にとどまらない。新たな審査モデルを糸口に創出した接点を、将来的な顧客基盤の強化に生かすことを目指す。
そのために必要になるのは、多様な顧客ニーズに応え続けることだ。事業領域が限られた既存の銀行に枠組みでは実現できない取り組みにもデジタルの力で挑戦し、「求められる銀行」のあり方を探っていく。
前出の幹部は、「リアルバンクだけでは現状、お客さまに役立つコンテンツを確立できていない」と課題感を口にする。そのうえで、「リアルバンクとデジタルバンクそれぞれの成功事例をホールディングスとして蓄積し、相乗効果を生み出していく」と意気込む。
「ニッキン70周年企画」の連載企画(全11回)は今回が最終回となります。