【ニッキン70周年企画(8)】全銀ネット、2028年に次期システム稼働へ

2025.08.14 04:40
特集 全銀協 システム
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日本金融通信社(ニッキン)は2025年8月27日、設立から70年を迎えます。本紙第1号が発行された1955年は、戦後復興を遂げた日本が高度経済成長期に突入する転換の年でした。あれから70年。急速な人口減少、慢性的な人手不足、デジタル化の進展など、日本は再び転換点を迎えています。新たな環境に適応するには、リスクを伴う挑戦が不可欠。「ニッキン70周年企画」の連載記事では、次の時代への「橋渡し役」として存在感を高める金融機関の姿を追いながら、10年後の金融界を展望します。連載第8回の今回は、全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)の次期システム開発を取り上げます。


 


将来見据え“柔軟性”重視 


全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)は、2028年5月から稼働予定の第8次全銀システムで、将来を見据えたオープン化を予定している。取引件数のさらなる増加やデジタル通貨の登場などにも対応し切れるようにするため柔軟性を追求。デジタル社会にふさわしい新たな決済基盤構築に向けた第一歩を踏み出し、日本の金融界のイノベーションを後押しする。


決済は「ドル箱になる」


「金利ある世界」では決済がドル箱になる――。金利上昇局面に入り、金融機関からは、そんな言葉が聞かれるようになった。決済口座を押さえれば、収益の源泉である預金を増やすことにつながるためだ。


その決済を支える国内基盤が全銀システムだ。23年のシステム障害の反省を踏まえて「安全性」維持を徹底しつつ、同時に顧客の「利便性」を向上させ、さらに新技術に対応する「柔軟性・拡張性」も高めるという難しいかじ取りを進めている。


同システムは、これまで国内の決済拡大とともに機能を拡張してきた。18年に、24時間365日稼働を開始。22年には、参加資格を資金移動業者に広げ、第一号としてワイズ・ペイメンツ(英国)の日本法人が手を挙げた。25年11月にはAPIゲートウェイ接続も開始予定で、国内の決済事業者も加わることが期待される。


1973年の第一次システムでは、1日あたりの最大処理能力が為替取引100万件だった。取引件数の拡大に応え、2019年からの第7次システムは、30倍の3000万件に増強。今後も件数の増加が加速することを見越して、その負荷に耐えられる次期システムの開発を進めている。


海外事例にもアンテナ


海外の決済インフラの調査も強化している。欧米など先進国に加え、最近ではブラジルやインドにも調査対象を広げた。特に、ブラジルの即時決済基盤「PIX」は利便性が高く、運用開始から約5年で急激に浸透している。


こうした他国の事例研究を踏まえ、今後の決済分野における技術革新にも適応できるようにする方針。担当者は「世界で何が起こっているか正しく理解し、日本がガラパゴス化して取り残されないようにしなければならない」と力を込める。


デジタル通貨への対応も重要だ。日本銀行が設置するCBDC(中央銀行デジタル通貨)フォーラムやワーキンググループ(作業部会)にメンバーとして参加し、デジタル社会にふさわしい決済システム作りに貢献しようとしている。


「ニッキン70周年企画」の連載第9回は8月15日に配信します。

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