【ニッキン70周年企画(5)】山梨中央銀、婚活支援で地域人口の減少に歯止め
2025.08.11 04:40
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日本金融通信社(ニッキン)は2025年8月27日、設立から70年を迎えます。本紙第1号が発行された1955年は、戦後復興を遂げた日本が高度経済成長期に突入する転換の年でした。あれから70年。急速な人口減少、慢性的な人手不足、デジタル化の進展など、日本は再び転換点を迎えています。新たな環境に適応するには、リスクを伴う挑戦が不可欠。「ニッキン70周年企画」の連載記事では、次の時代への「橋渡し役」として存在感を高める金融機関の姿を追いながら、10年後の金融界を展望します。連載第5回の今回は、山梨中央銀行による婚活事業への「銀行本体」参入です。
山梨中央銀、全国初〝銀行本体〟の実証実験
山梨中央銀行は6月2日から、結婚相談サービス「ワイシーブライダル」を始めた。地方銀行のグループ会社が婚活支援事業を手がける動きが広がっているが、銀行本体での参入は全国で初めて。実証実験として3年間取り組み、地元企業への貢献度や収益性が確認できれば、4月に設立した地域商社やまなし地域デザインなどグループ会社のサービスとして提供していく。
企業向けとしたのが特徴。企業と契約し、その従業員や事業後継者の結婚を支援する。福利厚生の充実や生活基盤確立による人材定着、事業継続に貢献するのが狙い。ほとんどが個人と契約する県内の結婚支援業者との競合を避ける意図もある。
結婚希望者の登録データは9万人超
婚活サービス大手「IBJ」(東京)と3月末に提携。同社の加盟店の結婚相談所として全国約9万5000人が登録する結婚希望者データベースを活用し、同社にシステム利用料を支払う。
山梨中央銀コンサルティング営業室の樋口里恵室長代理がコンシェルジュとなり、データベースに登録するPR文や写真の作成を補助。お見合い相手が見つかれば、樋口室長代理は相手方の結婚相談所と日程などを調整する。料金(税込み)は1人あたり初期費用11万円、月会費1万6500円、成婚料22万円。
取引事業者との会合や渉外係の訪問時にサービスを案内。地元新聞の紹介記事もきっかけとなり、7月下旬までに約20社から問い合わせがあり、うち16社を担当行員と樋口室長代理が同行訪問して説明。2社と契約に至った。
銀行ゆえの信頼感、「中銀さんなら安心」
「昔と違って色々やりますね」「そんなことまでしてくれるんだ」と樋口代理は訪問先で驚かれることが多いという。契約した甲府市のサービス業の社長からは「(従業員の)出会いの場がない。これを使って結婚してくれたら」と聞いた。また、婚活アプリを使った詐欺やトラブルが報道されるなか「中銀さんなら安心」と喜ばれた。
サービスの契約書や行内規定を作成したのはコンサルティング営業室の中込晋也室長代理。手続きの確認を兼ね、独身行員3人に「モニター会員」としての協力を得た。中込室長代理は「婚姻数の減少は人口減の要因になっている」と、人口減に歯止めをかける施策としての意義も重視する。
「ニッキン70周年企画」の連載第6回は、湘南信金の四半世紀にわたる待機児童解消の活動を取り上げます。(8月12日配信)