【ニッキン70周年企画(3)】りそなHD、大相続時代に勝機 信託機能を強みに
2025.08.09 04:40
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日本金融通信社(ニッキン)は2025年8月27日、設立から70年を迎えます。本紙第1号が発行された1955年は、戦後復興を遂げた日本が高度経済成長期に突入する転換の年でした。あれから70年。急速な人口減少、慢性的な人手不足、デジタル化の進展など、日本は再び転換点を迎えています。新たな環境に適応するには、リスクを伴う挑戦が不可欠。「ニッキン70周年企画」の連載記事では、次の時代への「橋渡し役」として存在感を高める金融機関の姿を追いながら、10年後の金融界を展望します。連載第3回の今回は、資産承継と事業承継にワンストップで対応して「承継ビジネス」の高度化を図っている、りそなホールディングス(HD)です。
りそなHD、「承継ビジネス」を一元化
「団塊世代」の遺言執行ピーク見据え
「日本全体が大相続時代を迎えている」。旧大和銀行時代の1987年から遺言信託サービスを提供するりそな銀行では近年、遺言の執行が増加。
遺言は、作成時より執行時にトラブルが多くなる。そのため、契約数の増加よりも、受託審査や途上管理を重視している。全件に関して、担当者が年1回、対面で内容や意思の変化を確認する。「団塊の世代」が遺言作成のピークである70代半ばとなり、40年ごろに執行のピークを迎えると見込む。
遺言信託と合わせ、商品のラインアップにも工夫を凝らす。その一つが、生前から死後まで資産管理を担う資産承継信託だ。医療・介護費や葬儀費用の支払いに対応し、2021年3月からは身元保証や生活支援をする身元保証団体3先と提携。25年6月までに190件成約した。
24年6月には、りそなHD傘下の各行が、ファンドラップ(投資一任契約)に資産承継特約を追加した。「親と同じファンドラップで運用したい」という顧客の声を受け、親の資産を換金せずに子どもの口座に振り替えられるようにした。新たに信託契約を結ぶことなく、特約のみで現物承継ができる。
ファンドや不動産部門との連携も
個人資産の承継に加え、事業承継にも余念がない。同HDは21年、投資専門子会社「りそな企業投資」を設立。本格的な事業承継の前にファンドが当該企業を引き受け、社の体制を整えて企業価値を高めてから次世代に引き継ぐ。
さらに、りそな銀は23年、事業承継などを支援する承継ソリューション営業部を設立した。東京と大阪に同部の拠点を置き、事業と資産の承継にワンストップで対応する体制を築いた。同行は不動産営業部を備え、銀行本体で不動産部門と連携できることも強みだ。資産管理会社の売買など不動産M&A(合併・買収)を支援できる。
鈴木信貴・東京承継ソリューション営業第一部長は、「この10年で一定程度、事業承継は進んだが、産業や経済の状況に不安を感じる経営者もいる。事業承継とともに事業構造の転換をサポートするのは銀行の役割」と強調する。
「ニッキン70周年企画」の連載第4回は、ふくおかフィナンシャルグループの五島久社長インタビューです。(8月10日配信)
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