時価総額で金融世界トップ10を 亀澤・MUFG社長
2025.08.05 00:01
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、グローバルでの企業買収を加速する。アジア地域、デジタルトランスフォーメーション(DX)、資産運用(AM)・資産管理(IS)の3領域を中心に買収を進め、グローバルで優位性のある中核ビジネスを強化。亀澤宏規社長(63)は「時価総額で世界のトップ10入りが念頭にある」と話し、米欧の先進的な金融グループと肩を並べる成長性と事業規模を早期に実現する考えだ。
◇
アジア、DX、AM・ISで買収加速
――ASEANでのビジネス拡大は。
「タイのアユタヤ銀行、インドネシアのダナモン銀行、ベトナムのヴィエティン銀行、フィリピンのセキュリティ銀行のパートナー銀行を軸に、約10年かけて東南アジア諸国連合(ASEAN)での商業銀行ビジネスを広げてきた。すでにアジアでの融資量は、グローバル展開する金融グループとしてトップの地位にある」
――アジアでの強みは。
「現地の金融サービス会社、デジタルサービス会社などを相次いで買収し、デジタルを駆使した金融サービスに強みがある。振り返ると、当地で配車最大手のグラブへの出資(2020年)が大きな契機となり、その後の買収が加速した。今後も現地企業の買収を視野に入れながら、デジタルでのバンキング収益を2029年度までにアジア全体の2割程度まで高めるが目標だ」
――北米の戦略は。
「北米は海外収益の4割を占める。AM・IS、デジタル領域は買収によるビジネス基盤拡大の有力候補。従来からのホールセール領域においても、脱炭素を支援するトランジション・ファイナンス(移行金融)、金融情報を保管・分析するデータセンターなどに投入資源を集中していきたい」
――撤退したリテール領域の再構築は。
「北米でのリテール領域も再構築を模索中だ。ユニオンバンクの全株式を売却(22年12月)したわけだが、ITコスト、さらには規制コストの増加が主な理由だ。ユニオンバンクは有人の営業拠点を持つ旧来型のリテールバンクだったので、当局の要求水準も高かった。将来的な収益性を考えると、規模を2倍にするか売却かの2択、というのが私の判断だった。2倍にすることはコストもリソースもかかり過ぎるので売却を決めた」
――アライアンスを組む米モルガン・スタンレーとの関係性は。
「外国為替の取引量ではMUFGとモルガン・スタンレーの合算で、グローバルのトップ5を狙えるぐらいまで増えてきた。加えて、モルガン・スタンレーとの関係性において、経営層から実務者レベルにいたる各層での人的交流がもたらす効果が大きい。東京、ニューヨークで春と秋の年2回、大規模な会議を開いているが、同時期にビジネスラインごとの交流も行っている。ウェルスマネジメント、市場、法人、リスク管理、ITなど50部門にも及ぶもので、トップ同士だけなく、各層での緊密な情報交換、信頼感は大きな財産だ。〝学び〟を目的にしたMUFGからモルガン・スタンレーへの派遣も定期的に行っており、累計では100人程度になっている」
財務余力は十分にある
――目指す経営指標は。
「海外に加え、日系大企業向けのMBO(経営陣が参加する買収)、LBO(借入金を活用した買収)案件などが依然として増加傾向にあり、26年3月期の連結純利益は3期連続の最高益を更新して2兆円を見通す。ROE(自己資本利益率)は12%(東京証券取引所の定義)、PBR(株価純資産倍率)も早期に1・2倍を達成したい。リーマン・ショック後、10~24年のEPS(1株当たり純利益)成長率は10%超となっており、世界トップグループの仲間入りを果たす水準。株主などへの還元を行いながら、各国、各領域で買収を進めるだけの財務余力は十分にある」
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